吉田コウヘイ

ヘカテ デジタルリマスター版の吉田コウヘイのレビュー・感想・評価

5.0
ピアノとアルト・サックスが奏でる旋律に、シャンパンの泡が弾けてメロドラマが始まる。

芳醇な映像、セリフ、美男美女、占領地アフリカの太陽、五月蝿く飛ぶハエ、銃声…。バロック、マニエリスムの名手ダニエル・シュミットの伝説的名作『ヘカテ』はディオールの絢爛な衣装に彩られながら、どこまでも現実的な土着性を画面に定着させたバランスで、永遠に現代的な映画作品に成り得ている。

ギリシャ神話をベースに、その美貌と奔放さで男を狂わせるローレン・ハットンの身体の艶かしい存在感。哀れに狂うベルナール・ジドローの瞳。彼の執着の醜さに、西欧諸国の占領支配のそれが重なり浮かび上がる。

2人を甘美な音楽と共に静かに見守る名優ジャン・ブイーズが素晴らしい。