吉田コウヘイ

レネットとミラベル/四つの冒険の吉田コウヘイのレビュー・感想・評価

4.5
「知っている、じゃダメなの!見て感じてほしかったのに…」
夜が明けて朝が来る、その間の数十秒の静謐さを体感してほしかったのに、無粋なバイクの音に邪魔されてしまったことが悔しくて泣いてしまう少女レネット。田舎に住みシュールレアリスムな絵を描く彼女は今を掴まえるために、研ぎ澄ませた感覚のなかで生きる。一方、大学で民俗学を学ぶミラベルは明晰な意味のなかで生きている。

この好対照な2人を、エリック・ロメールはまるで処女作『獅子座』へ立ち戻ったかのように瑞々しく活写していく。

4つの短編からなる92分だが、そのうち35分ほどを占める、会話と沈黙の淡いがまさにブルーの曖昧さで美しい『青の時間』が出色の出来だ。