Jun潤

658km、陽子の旅のJun潤のレビュー・感想・評価

658km、陽子の旅(2023年製作の映画)
3.6
2023.08.01

予告を見て気になった作品。
主演の菊池凛子始め、オダギリジョーや現在放送中の月9ドラマ『真夏のシンデレラ』にも出演している仁村紗和など、キャスト陣にも要注目ですね。

東京に暮らす工藤陽子の元に、いとこの茂が訪れる。
用件は、父の訃報だった。
長年音信不通だったために陽子は事実を受け入れることができず、茂ら家族によって連れ出され、元々のコミュ障もあって青森までの気まずい旅が始まる。
しかし、最初に立ち寄ったサービスエリアで起きたトラブルによって、陽子は一人取り残されてしまう。
そして陽子は、若き日の父の幻と共に、ヒッチハイクを繰り返す旅に出るのだった。

菊地凛子の名演技大爆発でしたね。
顔立ちは40代まんまなのに、立ち居振る舞いや言動からはどこか幼さというか、駄々をこねているような様子が見た目に見合っていない、シュールなキャラクターに仕上がっていました。
独り言は饒舌なのに他人と話す時はたどたどしく、子供ともまともに話すこともできない。
自分を乗せてくれた人に対しても時間をかけてようやく数言話すという、コミュ障バリバリな感じがちょっと共感性羞恥を誘ってきました。
個人的な感情も介入してきましたが、ラストの絶叫や独白には菊地凛子にしか出せない魅力が詰まっていました。

今作は東京から青森へ向かうロードムービーでありながら、乗せてくれた人やサービスエリアで出会った人との会話を繰り広げる群像劇×会話劇の形も取っていました。
また、車内のシーンも多めでしたが、サイドミラーやバックミラーに映る顔や、どの場所からどうやって撮影したのか分からないほどのカメラワークなど、狭い車の中でも広がりを感じる演出でしたね。

んまーしかしそうした群像劇×ロードムービーという無限の可能性を孕む設定からすると、ドラマの展開や陽子のキャラの振り幅が足りていなかったかなという印象も少しだけ。
しかし幽霊か幻影か言及されていないのに独特の存在感を発揮するオダギリジョーはさすがでしたね。
Jun潤

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