ポン・ジュノによるハリウッドメジャー大作! という企画ではあるが、ちゃんと自分の色を出している。問題は風刺SFも毒のあるコメディも、過去作の方が遥かにうまくやってしまっていることだ。ブラックコメディにしては長すぎるし、金をかけたSFにしては見た目の喜びが薄い。予告編の方が面白かった(WBの招待で試写鑑賞)。
まず前半1時間がいちいち回想に戻ってのナレーションによる経緯説明なので非常に辛い。ロバート・パティンソンの甲高い声も相まってSF×不条理劇としてのユーモアはあるのだが、流石に長いし、この何度も死にまくるという設定もそこまで軸になっているように思えず。要素が散乱しすぎだ。サブキャラも、例えば恋人とあの人(とあの人)の三角?関係は全く活きてこないし、マーク・ラファロ演じるいかにもな風刺キャラもただアホに描かれるだけで空虚すぎるため「現実で2回大統領になってるのにこんなんで笑ってる場合か?」としか思えず。そもそもコメディとして面白くないし。
終盤の転調は確かにポン・ジュノらしいと思わなくはないが、前述の通りそれまでの各要素が中途半端すぎて「蔑ろにされて良い命があるのか」という一本の軸を全く形成しないし、加えて活躍するのお前なんかい!というのもあり楽しみ方が全く分からず。ヘタに予算がついたがためにSF大作にもブラックコメディにもなりきれないという悲劇だ。うわぁ失敗してる……と思いながらずっと観ていた。