このレビューはネタバレを含みます
稀代の映像作家、ストリーリーテラーの、きっと最後の作品、しっかり目に焼き付きました。
事前情報全くのゼロでの映画鑑賞は、今までに無い体験。きっと今後もないだろうなー。
戦時下の中、母の喪失と母の妹が新たな母となる主人公。喪失の理不尽さに抗うような、凛とした表情。宮崎駿ならではの作画による演技。今回、ヨリの絵の構図や表情が全編良かった。
印象的な7人のお婆さんは、間違いなく白雪姫の小人のオマージュ。魔女、魔術的な異界の王の大叔父。白雪姫はナツコか？ナツコを助け出すマヒトは王子様？うーむ。
異界の風景は、敢えて、印象派絵画のタッチにしていることで、異界を絵で演出している。そして、鳥。この生物にこんなに、怖さやユーモラスを感じるとは。もののけのシシガミの表現を思い出す。しかし、何故人間のカリカチュアがインコだったんだろう？
君たちはどう生きるか？火の海になる理不尽に溢れた世界。大叔父が創造した美しい世界。主人公は、母の喪失を乗り越えて、新しい家族と生きることを選択する。それは、宮崎駿なりに、この不完全な世界から逃げるな、というメッセージ。
それを伝えるために、全編、宮崎駿が培ってきたアニメの映像表現が叩き込まれている。圧巻。それをIMAXという最高の環境で観れる至福。この表現は今をときめく、ufotable、mappaにも出来ないと感じるオリジナリティ。そう、圧倒的なオリジナリティ。
太平洋戦争、命の繋がり、世界の構築と崩壊、群としての人（インコ）、そしてボーイミーツガール。今までの作品のモチーフを叩き込む。
最後だ、という宮崎駿の想いが溢れていた。
しかし、しかしだ、宮崎アニメの持つカタルシスは無かった。ソコは残念だった。
カリオストロに出会ってから、幾つもの素敵な物語を堪能させていただきました。
ありがとうございます、宮崎駿。
