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君たちはどう生きるかのEeeのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

分からない。正直理解できない。
とっ散らかっている。

これが良い効果になるか否かは、作品によって大きく違う。勿論それが素晴らしいものに昇華する場合もある。
これはどうだろうか。

出だしの戦時中の描写は風立ちぬのそれを感じて、アナログアニメで独特のリアルを表現するジブリの技量に痺れながら「ああ、始まった。」と鳥肌が止まらず。
随所に散りばめられた宮崎の世界のかけらたちはただただ美しく、相変わらずの作画への熱意に胸が熱くなった。魚や鳥のぬるぬるした描き方が本当に素晴らしい。

やたらと病床に伏す女性が出てくるのは母を投影していたり、実家は実際に航空機を造っていたり。裕福な少年時代であったからこその露骨な邸宅の表現であったり。宮崎の自伝的な要素も大きかった。

これまでの軌跡のレリーフが至る所に刻まれて、作品自体がその博物館のようだった。
ただその博物館の順路やキャプションがあまりにも分かりにくくて、疲れたなあと思って椅子を探しても見つからない。訪れた人は疲れ切ってそこを後にする。
(同行した人間曰く全作品ごった煮の闇鍋状態であった。正直的確である。)
輝かしい経歴を持った館長の趣味だが、職人気質すぎて周りはたとえ意見があっても口出しできない。そんなところだろうか。

三連休中日の日曜の昼間、会場は超満員だったにも関わらず子供が少なかったのも少し寂しかった。トレイラーが無いせいか。ただ、観たとしても子供には難解極まれりだろう。千と千尋は難解なメタファーのオンパレードながらも、子供が楽しめるエンタメ性が少なからず存在した。
宮崎の視点はもはや幼い子供たちには向けられないのだろうか。

ただ、情報に飢えた世の中でここまで情報公開を抑えるという歴史的なある種の宣伝を成し遂げたこと、劇場で本編が始まるまでこんなにも高揚感を抱いたことがまず久しく、嬉しかった。
エンドロールを見てわかるように日本のアニメ界を総動員し、純粋に自社のバジェットで創り上げていることにも頭が上がらない。

宮崎駿の功績は素晴らしい。
アニメの中で”ジブリ”というジャンルを構築し、それを世界に響き渡らせた。

それを踏まえて点数はつけられない。

でもやっぱりこれは「君たちはどう生きるか」よりも、「俺はこう生きたんだぞ」だった。これは正直予想通り。でもそうじゃないのも期待していた。
己の感性で、好きなことで突き進めってことなのかもしれないけど、ものを生み出す人間はそれだけでいいのか?
これはもう少し考えてみたい。

息を呑むほど美しい風景画に定評のある絵描きが、最後にサイケな抽象画を描き残すような感じかなあ。何年か後に見返すと何か伝わるだろうか。

御年90にもなって引退宣言をけろっと撤回した映画音楽の巨匠John Williamsのように、また頑張ってくれないかなぁと思うのはファンのエゴか。

今は心より功績を讃えて。
関わった全ての方々、お疲れさまでした。
Eee

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