ねつき

君たちはどう生きるかのねつきのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.3
「素晴らしいじゃないか、マヒトを産めるなんて」


うん、わけわからん。
映画見ながらも「わけわからん」と思ってて、エンドロールはちょっと不機嫌になるくらいだったけど、鑑賞から数時間たって、やっと「ふーん」という気持ちになってはいる。
まあYouTuberの解説とか見てしまっているので、私1人で考えたことはないのだけど、それも踏まえて今思うことを整理しておく。




とはいえわけがわからないという前評判は聞いていたので結構覚悟はしていたのだけど、てっきり「君たちはどう生きるか」を問われて鑑賞後には自問自答の渦に飲み込まれてしまうような、そういう類のわけわからなさだと思ってたよ。冒頭戦時中のシーンから入ったから「あー戦争系ね、こんなに必死な思いで世代を繋いだ先祖がいる中で、アンタどう生きんの?って感じね」と思ったけど、宮崎駿が私のような凡人の思いつきそうなこと、広告なしで注目集めてまでやるわけないのだった。

これは「君たちはどう生きるのか」という1冊の本を中心にまわる物語の中で、「僕はこう生きましたよ」という宮崎駿の自伝なんですね。卵が先か鶏が先か。幼少期に彼自身がとらえた世界の旅の、断片的な記憶がスタジオジブリという作品を作っている。セルフオマージュ的なことが頻繁に起こっているのはまさにそこで、セルフオマージュって別にファンサービスでも使い古された表現の踏襲でもなんでもなく、ただ自分の中に“ある”ものが、その後の映画としての作品作りに切り取られている、という話。だからどっちが先か、がない。らしい。時系列的には少年時代が先だけれど。これはその少年時代に旅をする話だもんね。

私たちも、時折少年時代を頭の中で遡り、思い耽るなんてことあると思うけれど、その時の記憶映像って今の私が作り出しているものではあるよね。どこから生まれてるか、というとそこは難しかったり、というか考える必要がなかったり。ただ私自身も、今までの人生で得た知見から、人生の行くべき道(作りたいモノ)をブラッシュアップしていきたいと思っていて、それは後から振り返ってみたら、セルフオマージュってことになんのかな、と思った。

宮崎駿って、世間からすごく分断されたところに生きている、らしい。AKBが全盛期だった頃にインタビューで「テレビとかみないんですよね。AKB?なんですかそれ」みたいなこと言ってんの聞いたことあって、それはそれは文化的な、文学的な世界を生きている人なんだろうな、と私は思っていて。だから私たちがyoutubeショートとかみてヘラヘラしているような時間で、自分自身と向き合ったりとか、何にも汚されていない世界の空想に落ちて行ったりするのかな、と、思う。そしてその空想の世界が、あの大叔父さんが作り出した世界、なのかな。
美しいものしかなくて、尊くて、でも儚い。簡単に崩れ去ってしまう。こういう空想の世界って美しいけど不気味な感じがするよね。現実世界が辛くて、その中に居座りたくなる気持ちもわかる。例えば、得体の知れない土地で新しい母と同居するような。母も母で、「私も同じ経験してる」と言っていたし、少女時代に逃げたくなるような時期があったんだろう。そしてマヒトに出会い、この子を産めるんなら私の人生いいじゃんとなり、↑のセリフを言って現実世界に戻っていった。そうなんだよ、未来ってわかんないんだよ。





とにかく、これを勧めてくれた先輩が言ってた「観たら語りたくなる」っていうのはよーくわかった。今私は語りたい。こちらの先輩、語りたくなるとか言ってたから何か得ているのだろうと思って、鑑賞後「わけわかんなかった」と伝えたら「ね、わけわかんないよね」と言われ、私と一緒で安心した。
まあ最終的に今はわけわかるんだけど、映画ってわけわかるかどうかじゃなくて、普通に楽しめるかどうかを優先したいので、私はもう観ないかもな。何か生き方のアンサーを出してくれる媒体に出会いたいんだ。
あ、でも小説はちょっと読んでみようかな。


んで、お前はどうしたい?
ねつき

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