おさつ

君たちはどう生きるかのおさつのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

ここ最近のジブリで一番ワクワクした世界線だった!
既にみた人が「メタファーが多くて考察見てもう一度見に行きたい」「この後にもう一度もののけ姫を見ると泣ける」とか言われて訳わかんなくてみました。笑

けど純粋に夢のような美しく悲しげで質感のある不思議な景色、デフォルメされたかわいさと生々しく不気味な生態器官を併せ持つ動物たちの描写など、ジブリらしい世界観にただ引き込まれた。

見たあとに考察をいくつか読んでも、個人的になんだかしっくり来なくて。
リアルの宮崎駿との関係性の言及が多かったからかもしれない笑
裏にそんな意図があっても、個人的には映画内の事実だけで完結したい。

個人的には描写そのまま、神話に類型の多い黄泉参りの英雄譚、そして少年のトラウマや葛藤の克服だと感じた。

時代的にあり得たとしても自分の母が逝去してすぐに子をなした父と叔母への怒り・居場所のなさがあったと思う。
だから個人的に眞人が石で自傷したのは、自分を蚊帳の外にして母を気を止めず幸せそうにして見える父から、もっと注目をもらうための自演に思える。

この時の眞人にとってのライバルはナツコとお腹の子であり、
それらに勝とうとした・優劣を付けようとしたのが「悪意」と言ったのだと感じた。

そしてそれをナツコは理解していたと思う。だから見舞いの時に「こんな傷をつけさせてしまってごめんなさい」と、亡き姉と眞人に罪悪感を覚えたのかなと。

それだから(重いつわりから、おそらく妊娠からの体力低下で)瀕死になった時、気力がなくなり、子供と共に死の世界に留まろうとしたのだと思っている。
ずっと暗に咎めてくるような眞人のよそよそしい態度には、心の内では傷ついていたに違いない。。

そして産屋で「大嫌い」というのも、自分を苦しめた眞人への本心だろう。
眞人も「父のため」渋々ナツコを取り戻そうとしていたのが、産屋で初めてナツコの葛藤を知り、自分のこれまでの態度を反省し、ナツコを赦す。そして姉からの許し。それがナツコが気力を取り戻し、生き返れた理由だと思う。

(ちなみに下の世界にいる間は、眞人も現実では瀕死で、序盤と同じく女中のおばあちゃんたちが看病してくれてたのが例の木彫りのお守りたちだと解釈してる)



[話はそれるが、産屋のシーンは大事な和解のシーンだったけど、禁忌と言われたのは生の象徴(陰陽道の陽を司る男性であり、リアル生者の眞人)が死の象徴(陰陽道の隠である女性であり、先に死にかけたナツコ、昔は生理や出産の血も隠の穢れ)に干渉するという死の理りを覆す事自体をさしているからだと思う。(数々の神話と同じく)
蘇らせようと来た男に対し怒り、拒絶する女の構図はいかにもイザナギイザナミのラストのようだ。神話ではバッドエンドだが今回はハッピーエンドで終わってよかった]



自分がナツコを苦しめてたこと・老ペリカンの独白から、自分のなかに偏見や贔屓目があることを眞人は理解した。

積み木の積み重ねは社会構想・生態系を作るうえでの捕食者と被捕食者・優劣であり、
今後もきっと少なからず利己的になることもあるし、自分は平等は語れない。
それを自覚した上で他人と衝突と和解を繰り返し、少しずつ成長していきたい。

そう決意をして前を向いた眞人のこれからを祝福するラストだと思った。
おさつ

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