ヤーミール

君たちはどう生きるかのヤーミールのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

面白かった!
戦時中、母親を火事で亡くした主人公・マヒトは、引越し先の田舎で母の妹で後妻のナツコを紹介されて複雑な気持ちになっていた。ある日、ナツコが敷地内の曰く付きの塔に向かうのを見たマヒトは、彼女を連れ帰るべく後を追い、不思議な世界に迷い込んでしまう。うさんくさいアオサギとなんやかんやで罵り合い助け合いながら世界を旅したマヒトは旅の終わりに世界の主・大叔父から「悪意のない君にこの世界を継いで欲しい」と言われるが、「僕にも悪意はあります、だからできない」と断り、ナツコと共に現実世界に戻る。

ジブリ版『不思議の国のアリス』というか、『千と千尋の神隠し』の少年版という感じで面白かった!
個々のモチーフやメタファーについては正直よくわからないけど、火事やマヒトの工作、アオサギのサギ仕草やお尻、荒れる海、魚を捌くところ、美味しそうな食事、死にゆくペリカン、迫りくるサイコパスインコ集団、素早い身のこなしのインコ大王などなど、見てるだけでワクワクするアニメーションがたくさんあって楽しかった!
アオサギのサギ仕草(飛び方とか、魚の飲み方とか)が上手くてさすがやな〜!と思ったし、ラストの現実世界に戻ってインコに「まあ可愛い〜!」と声をかけるシーンにちゃんとインコのフンが書いてあるところもすごくよかった、鳥は可愛いけどトイレのしつけできないからな〜〜〜〜〜!!!鯉とかカエルが大量発生するシーンもめちゃくちゃ気持ち悪くてとてもよかった。

「少年が若返った母親と異世界を旅する」という部分については正直「さすがはロリコンとマザコンの称号をほしいままにする宮崎駿なだけあるぜ…」とちょっと引いた。

あと、大叔父との最後の会話の時に「友だちを作ります!」と言ってたマヒトが結局どうも田舎の地元民たちとは打ち解けないままさっさと東京に帰ったらしいオチでめちゃくちゃ笑ってしまった!!!友だち作るんちゃうんかい!!!!!大叔父は「友だちを作るのもよい」、とちょっと言葉を濁して返すので必ずしも作らなくていいっぽいんだけど、それにしたって…作らんのかい!!!!!!!
物語の舞台がお屋敷の敷地&大叔父の塔で完結していたこともあり、田舎全体が怪しい異界みたいになっていた(最近のホラーで問題提起されている、土俗ホラーって田舎蔑視では?問題)あたりも含め「自然のことは好きだけど田舎の無教養貧乏平民のことはめちゃくちゃ嫌いなんやな…」という感じで味があった。確かにトトロでもお父さんは大学教授(今と違って当時は地位が高かった、たぶん給料も)で他の地元民と近所付き合いしてる様子ないし、カンタ&ばあちゃん以外の地元民ほぼ出てこないし、サツキは学校で上手くやってるっぽいけどメイはまだ幼児なので同い年の友だちがいない(なのでトトロと友だちになる)んだよな…。『風立ちぬ』は言わずもがなエリートの話だったし…。

マヒトの母親&ナツコへの思慕がちょっとわかりかねた(死んだお母さんが恋しい、だけならわかるけど、ナツコのことも好きっぽく感じた。でも単にマヒトがお母さん好き過ぎるからナツコにスライドした時にナツコ好き過ぎに見えるのかも?)のと、上記のエリート感が鼻についたのとで、個人的にはどこにでもいる甘ったれの女の子が異世界で荒波にもまれて自立していく『千と千尋の神隠し』のほうが好きだな〜と思った。

全体的なテーマについては、たぶん創作についての話かな…?と受け取った。大叔父が作った創作の世界にはいつの間にか人食いインコが住み着くようになったので、純真な誰かに後を継いで作り直してほしかったけど、マヒトにはマヒトの人生と悪意?がちゃんとあるので受け継ぐことはできず、でも丸ごと受け継ぐことはできなくても創作は人の心に欠片を残していく…みたいな感じかなと思った。

冥界下りの物語の変奏でもあるかもしれない、時の流れの重なる場所(あの世)に迷い込んだナツコを取り戻しにいったマヒトは二人とも生者なので成功して現世に戻り、違う時の流れを生きるヒミやキリはもとの時間の流れに戻っていき、現世の時間に繋がっているからキリは老婆になって帰ってくるという感じ。
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