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君たちはどう生きるかのyukoのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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あの体験があったから、そのことをいつまでも自分のなかで持っていて何度も思い出して、だからこれからも生きていける、というようなことを体験としてみせてくれるのはジブリ作品のぜんぶにいえることだと思います。
そして今回の作品はそれの究極で、同時に宮崎駿監督の、そういう体験は誰にでも今までの人生のなかであって、各々大切に持っていることだと思います。えっ、ありますよね?というような意図がみえるような作品に感じました。

体験というのはあとで思い返してみると、自分の記憶の断片が繋ぎ合わさっていたりしてなんだか荒唐無稽なものになっていたり(もしかしたらそこに夢でみた情景があわさっているからなのかも)、誰かにそのことを伝えようとしてもどの言葉にもあてはまらなかったりもするし、なかなか言葉では伝わりきらないもので、一緒に体験していたとしてもそれぞれ残るところは同じだったり、違っていたりする。(どこまでいってもそのひとだけの体験だからそうなるのもとても良いなと思う)

この作品を一緒にみた友人たちと鑑賞後に居酒屋で、あの場面めっちゃ良かったよね、なんでなのかは全っ然言葉で説明できないけれど!(実際に夢のなかのような幻想的な情景、としか言えないような場面)というやりとりもそういう体験のひとつな気がしました。

そのなかで一番号泣したのは、真人が、自分と同い年の母親(自分の母親になるまえの母親)と手をつないで楽しそうに走るところ。なんでそこまで涙が出たのかはよくわからないけれど、植本一子さんが何かで書いていた、お母さんが育児をしていたときにひとりで思っていたこと、悩んでいたことを、お母さんのそのときの言葉でいま知りたい、そういうものは残っていないのだろうか、というような文章を何度も読み返したことを思い出しました。

この作品を体験して3ヶ月経つけれど、ときおり身体のなかにまだ渦巻くものがあって、それをすこしずつ何度も感じていきたいような気持ちです。
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