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別れる決心のyukoのレビュー・感想・評価

別れる決心(2022年製作の映画)
5.0
ヘジュンと同じ瞬間に私たちもソレに出会って、久しぶりにゆっくり眠って、夢なのか現実なのかわからない世界に入り込む。そこに毎朝現実の私たちのスマホから流れるのとおなじ、つい身体がびくっとなるあのアラーム音が2回乱暴に鳴り響いてその都度強引に目を覚まされました。
雨の境内をふたりで傘さしながら歩いたり立ち止まったり、リップクリーム塗ったりする場面(彼女のその行為でこんなにもどきどきする自分も、完全にヘジュン目線でずっとソレを目で追っていたんだなと気付くような)、あれは現実なのか、ヘジュンがみている夢なのか妄想なのか明示されない場面、でも本当のところはたぶんどっちでも良くて私にとってはとにかく大好きな場面で、ソレがあの音声を何度も聴くみたいに、何度も脳内再生しています。

どれほどお互いがお互いを好きなのかという気持ちが画面から言葉と、行動と、目線と、しぐさからずっと溢れていて、ずっと涙目になってしまう。
だけど言葉で言葉のそとがわのことを伝えようとするのは「じれったい」もので、なかなか伝わらないし受けとりかたも違ったりする。同じものでも誰かにとってはそれは緑色で別の誰かには青色で、「心」が翻訳のせいで「心臓」と理解されたりもする。そういうなかで、おなじくらいの感情をお互いに向け合っていてもなかなか伝えあうことは出来なくてやっぱり個々で差異があること、でも時間差はあってもかなり近い感覚で分かち合えるときもあるということ、最後にソレがヘジュンに携帯で伝えていた場面からあの結末までのあいだにそういうようなことをみせられてしまって、また涙が出ました。
いろんな人の言葉で、パク・チャヌク作品のことが書かれたユリイカを読んでからもう一度この映画を観て、ソレの伝えていることがそうやって時間差で自分も受けとれた気がします。あの結末は私にとっては、“永遠に別れない決心”そのものでした。
そうしてこの作品が好きです、と言いたくなる映画がまた増えて、嬉しい気持ち💭

(評判通り出てくる人たち全員がずっと暗い顔をしているなかで、「さすが最年少!」の女性巡査は(めちゃくちゃ頑張ってそうしてるのかもしれないのだけど)唯一明るい存在で、彼女が出てくる場面は笑顔になっていました、好き💭)
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