yuko

極北の怪異/極北のナヌークのyukoのレビュー・感想・評価

-
社会学者の岸政彦さんが現代思想で書いていた、「本(文章)をよむという行為は、映像をみる、話をきくということよりももっと能動的で、だから得られることもある」というような言葉が頭に残っていて、それでいうと映画をみるというのはとても受け身なものなのかもしれなくて、そちらにもだからこそもたらされることもあると改めて思いました。

空族の富田監督がなにかのインタビューで、いろんな意味でとても衝撃を受けた作品としてあげていた「極北のナヌーク」のことが印象的で(映画を観たあとにその文章を読み返してみると、短い文章だからもあるけれどすこしうーんとも思いました。この作品についての富田監督のもっと長く深く書いた文章が読みたくなった)、いつか観たいとずっと思っていたところに、長田にある神戸資料館で上映すると知って即座に予約して観ました。
上映後に講座があり、そのときの話しでこの作品の理解がとても深まって、それはびっくりもするし辟易もするような体験だったのだけど、そのいろいろを知る前と後でこの作品を観た感触の変わった部分と、それでも変わらない部分がありました。観たひとによって捉えかたもさまざまだと講師の井上さんは言っていて、あるイベントで会ったドキュメンタリー映画を研究しているひとにこの作品のことどう思いますかって聞きたくもなる。

いまだにあの映画で観た、極北で生活しているひとたちの表情とか、観てるだけで身体の芯から凍えるあの情景が頭にずっとあって、自分にとってはふとしたときにこれからも思い出してしまうような作品になりました。
yuko

yuko