タカ

スモールワールドのタカのレビュー・感想・評価

スモールワールド(2021年製作の映画)
4.1
自分たちの子供も守れないなんて
    人間は一体何という生き物だろう

人身売買という社会の闇
国から国へと転々と
万国共通で需要があるのは胸糞悪い
権力者側にもそういった嗜好を持つものが居るから根絶しないのだろう
毎年150万人の子供が誘拐され、奴隷は3億人居ると劇中で言及していたが
ちょっと半端じゃないなと思ってしまう
至極平和な日常で暮らしているので数字を出されると面食らってしまう
自分が思っているよりこの世界で基本的人権は担保されていない
恐ろしい、そして自分の無知も恐ろしい

基本的には誘拐された少女とそれを追う一人の刑事のストーリー
よくありそうなプロットだけど恐るべきは追跡している期間、、12年❗️
12年の追跡劇を描く
もちろんじっくり描くのでなく、かいつまんだ形ではある
個人単位、組織単位、国単位
単位が変化して置かれる状況がどのように変化したかを描く
目的としてはほぼほぼ小児性愛者の性的搾取なので目を背けたくなる展開の数々
なかなかにキツい

絶望的状況下で少女のマインドが変わっていくことを見ていくのが十分に辛いのだが、刑事の苦悩も辛い
事件に長く関わりすぎたせいで自分自身も歪んでいく
ウォータースライダーのくだりは象徴的
自分の中の天秤が常に動き続けているのがよく分かる
こっちまでしんどくさせるのどうよ

カーアクション等、エンタメをないがしろにしていないのが嬉しいところ
重い空気の中でもダイナミックな演出があると"映画観てるなぁ"と思って何だか良い

沈んでしまうラスト
「小さな者の一人をつまづかせる者は大きな石臼を首にかけられて深い海に沈められる方がまし」
そうか…そうなのか
「あなたは奴らと違う」と慰みの言葉をかけられたとて、ずっと瀬戸際に居たのは事実
最後の"やるべき事"に関してもそれをやったところで何の解決にもならないし、それどころか罪を負っているだけなのは本人が一番分かっていること
たとえそうだとしても弾が残されず自分の手で決着をつけられないのはあまりにも…と思ってしまう
神の救いもないのか、結局彼の人生は何だったのだろうかといたたまれなくなってしまう

題材が題材なだけにストレートで日本公開できなかったのかな
クオリティとしては相当な作品だと思う
とにかく食らうなぁ
尾を引く…
タカ

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