回想シーンでご飯3杯いける

ザ・キラーの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
3.6
マンションの高層階で、隣の棟を狙う殺し屋を演じるのはマイケル・ファスベンダー。クールな語りが長々と続いて凄くハードボイルドな雰囲気なのだが、、、ここでいきなり撃つ相手を誤ってしまうという、何とも意表を突いた展開。

殺し屋として致命的なミスを犯した主人公は、一転して自らの、そして家族の命を追われる身となってしまう。

一見、殺し屋のハードボイルドな美学を描いているようで、実は殺す側ではなく、一歩間違えれば殺される側に身を置いているという構図が何とも面白い。ハードボイルドの皮を被った、シュールなコメディでもあるという二層構造になっている。

「計画通りにやれ」「予測しろ」「アドリブは無し」「感情的になるな」等、主人公のモノローグで語られる信条は、結局のところ殺し屋としてはあまり忠実に守られておらず、本作をプロフェッショナルに作っている映画製作者の信条として機能しているのではないか?と考えた時に、ストンと腑に落ちた。一風変わった映画だと思う。