岩嵜修平

マエストロ:その音楽と愛との岩嵜修平のレビュー・感想・評価

3.7
天才バーンスタインの人間味だけを切り取った映画。しかも主役はキャリー・マリガン演じるフェリシア。才能に惚れ込み、彼自身を愛し、愛されながら、夫の抱える公然たる「秘密」に苦悩する様をドライに、時にじっくりと描く。映画上手男ブラッドリー・クーパー本領発揮。

キャリー・マリガンは、アカデミー賞主演女優賞ノミネートは間違いないであろう迫真の演技。30代から60代までを全く違和感なく演じられること自体が凄いし、終盤の長回しの語らない表情の変化も凄まじい。母としての顔も含め、複雑な内面を見事に表現。『PYW』『SHE SAID』にも連なる存在を体現した。

本作のパンフが無いのが惜しいが、バーンスタイン家公認とのことで、実話だからこそ話としてはシンプル。楽曲や演奏シーンも意図的に盛り上げきらず、編集もグッと来そうなところを意図的にカットしたように思えた。前のショットからの連なりも唐突に。白黒→カラーの変更も時代背景に合わせたものか。

本作は完全に『アリー/ スター誕生』に連なる話(元々、スピルバーグが監督予定だったが、本作を観てブラッドリー・クーパーに依頼したとか)だったので、次回作は全く関係ない作品を見たい。果たして、向かう先は、スピルバーグかスコセッシか、はたまたイーストウッドか。いずれにせよ未来の巨匠感。
岩嵜修平

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