回想シーンでご飯3杯いける

ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

4.0
チャドウィック・ボーズマン主演の「マ・レイニーのブラックボトム」のジョージ・C・ウルフが監督。同作に出演していたコールマン・ドミンゴが主演。公民権運動の指導者、キング牧師の呼びかけで実現したとされている1963年のワシントン大行進であるが、本作では、裏の立役者として、コールマン・ドミンゴが演じるバイヤード・ラスティンという活動家にスポットを当てている。

キング牧師よりも年上で大学の准教授という経歴を持つ彼は、知的だけども敢えて周囲を刺激するような荒々しさを併せ持つ。個人の人権が制度上では認められつつも、まだまだ差別が激しかった実情を打破すべく、彼は周囲の仲間に10万人規模の平和的行進を提案する。黒人コミュニティの中にも、穏健派と急進派がいた事は既に知られている通りだが、その構図を非常に分かり易い形で描いている。

ラスティンは同性愛者であり、当時に於いて二重の差別を被る存在であった。警官による不当な暴力によって折れた歯をトレードマークにして、非暴力による公民権活動を実現していく彼の姿は、とてもユーモラスで魅力的だ。ビジュアル的に極端に美化せずに描いている点も、本作の真摯な姿勢を感じさせる。

公民権運動に参加していたミュージシャンの名前が実名で登場する他、当時親しまれていた黒人音楽も多数挿入される。事務局で働く若者達にスポットを当てているのも良い。このクオリティのオリジナル作品が当たり前のように配信されるNetflixって、やはり凄いと思う。