KnightsofOdessa

Afire(英題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

Afire(英題)(2023年製作の映画)
2.5
[ドイツ、不機嫌な小説家を救えるのは愛!] 50点

2023年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品、銀熊(審査員グランプリ)受賞作。ペッツォルトは6回目の選出となる。本作品は前作『水を抱く女』に続く"エレメンタル"三部作の二作目となっているらしい。或いは"創造性と愛"についての三部作とも言われているらしい。水の次は火ということだが最後はなんなんだろうか(普通そういうのって四元素な気がするんだけど)。前作はウンディーネ伝説を基にMPDGとウンディーネを掛け合わせた現代の神話を作り出していた。今回は山火事が徐々に迫ってくるという心理的圧迫感のある状況を作り出していくなど、残念ながら実際に山火事が近付いてくる終盤までは画面上での切迫感のない構成になっている。寧ろ海の方が存在感があり、無理矢理山火事と結びつけるなら、海は山火事の理論的最終到達点でもあることから、世界の端のような捉え方もされているのは興味深い。物語は作家のレオンが友人フェリクスと共に彼の母親が所有する海沿いの別荘へとやって来るところから始まる。しかし、そこには既にフェリクス母の同僚の姪という若い女性ナジャが到着しており、三人はなし崩し的に共同で生活することになる。前半30分は顔すら見せないナジャだが、夜になると男を連れ込んで薄い壁を喘ぎ声が貫通するなど第一印象は最悪…なのだが、会ってみると可愛い人だったので一目惚れ!というなんとも都合のよすぎる展開に。また、主人公レオンも中々にいい性格をしていて、フェリクスの誘いは基本"仕事が忙しいから"と断り、かといって仕事に集中しているかと言うとそうでもなく、自分のしたいこと以外はやりたくないという、要するにガキなのである。フェリクスは真性陽キャという感じで、レオンというめんどくさいガキに大人で優しい対応をしている。更にナジャが寝ていたらしきライフガードのデヴィドも加わり、終始不機嫌なレオンを他所に三人は親しくなっていく。レオンは基本的に属性で判断するようで、アイスクリーム売りだったナジャもライフガードのデヴィドも見下しているようだが、後にナジャが文学博士取得中の学生だったと知ると逆ギレしている。というように、レオンは隅々まで好感度0の男なのだが、ナジャは事あるごとに彼を救おうと立ち回る。それこそウンディーネみたいな伝説の生物(この場合だとサラマンダー?)だと納得もできるのかも知れないが、なろう転生漫画じゃあるまいし、"愛だけが自己欺瞞と自己陶酔に溺れた彼を救い出せる!"なんて言われても苦笑いしか出てこない。
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