うっちー

ビヨンド・ユートピア 脱北のうっちーのレビュー・感想・評価

4.3
日々の自分の不平不満がいかに贅沢なものかを思い知らされる、脱北ドキュメンタリー。監督はアメリカ人女性で、韓国で脱北者支援をしているキム牧師に網を張り、取材者を得ている。

脱北は中国を経ての逃避行となるのは知っていたが、中国入国後、ベトナムやラオスでもこんなに危険があるとは……。また、仮に難を逃れても、人身売買や犯罪に巻き込まれる可能性も非常に高いという。この世のもっとも暗い闇、あるいは生き地獄だ。

夫婦と祖母、幼い子ふたりの家族と、一人の少年の脱北をメインとしたこの映画は、撮影すること自体の困難さ、危険さをまざまざと感じさせてくれる。また、当人たちの映像や記録以外にも、どうやって入手したのか、現在の北の有様をも垣間見せてくれる。この惨状と衝撃は胸にのしかかってくる。また、南北分断の経緯もシンプルに説明してくれているので、この事情に明るくない人にもやさしい作りだ。

ポップコーン、お菓子という概念さえなかった姉妹の様子が、やはり痛い。幸い無事に逃げ延びた彼女たちはあっという間に順応するのだろうか。老齢で逃げた祖母の気持ちは如何ばかりだろう。とにかく観てよかった作品でした。
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