うっちー

瞳をとじてのうっちーのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
3.5
やっぱり長過ぎたし、丁寧に過去を追ってゆく前半が淡々とし過ぎていて正直眠かった。

メインテーマになっているのが人探しとその人の不在によって主人公にもたらされた不遇と後悔みたいなこと、と個人的には感じられて。かつ、そのメインテーマを説明する道具が「人探し」番組と古いフィルムに残された生き別れ父娘の再会という、かなり古臭いもの。それでもゆったりとしたムードや暗くしっとりした美しい映像故に凡百の映画とはもちろん違う味わいなのだが。

結局、主人公の元映画監督、ミゲルが探し当てた失踪していた俳優、フリオには一体何があったのか。そのミステリーに一切色合いをつけていない為、観客はなにも想像できない。未完成の映画での親子再会とフリオ(でも、記憶喪失。別の名前で別の人生を歩んでいた)自身の娘、アナ(あのアナ・トレント!)との再会を重ねているのだけど、全くエモーショナルではなく。どちらかと言うと、フリオのクラス老人施設の近くの古びた元映画館にフィルムを持ち込んでフリオやアナに映画を見せること、フィルムを回すこと自体がこの作品の目的なのでは、と感じでしまった。古き良き映画や映画館への思慕、人生の時計の針をなんらかの理由で止めなければならなかった人(エリセ監督自身か)へのなんともいいようのない感情(後悔、哀れみ、あるいは共感や懐かしむような?)を包み込んでいる作品というか。

なんて意味を考えながら書いていると、やはり思ったより良かったのかとも思う。とにかく解釈の難しい作品だった。

作品に似つかわしい、地元の古い映画館で観たのは良いのだけど、途中観客の方のガサガサ音(紙袋から何かを取り出す)にブチギレた女性が大声で怒鳴るというハプニングが。悪いけど怒鳴る貴方の方がうるさいよ!と残念に感じました泣。
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