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夜明けのすべてのDのネタバレレビュー・内容・結末

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

# ストーリー展開

わりとずっと日常を観察してる感じ。
栗田科学の人たちの穏やかさは、すごく好き。
最終的に、移動式プラネタリウムの件を通じて前に進むってのは良かった。

でも、他の人のレビューに「だんだんと治っていく様子が描かれている」って書いてあったけど、
正直、回復傾向にある?っていうのはわからなかった。
山添にとっては、今の環境で前向きに進もうとしてる感じはした。
でも藤沢にとっては、PMSの症状の改善につながる描写はあまりなかったように思えた。
もちろん「栗田科学で働けて良かったです」というのは、
彼女の人生としては良い期間だったなろうなっていうのは分かるけど・・・。

# 映像・音楽

音楽が良かった。ポロンポロンという優しいSEのようなBGM。
音楽はほとんどなくて、静かな映画だった。

あとから知ったが、16mmで撮影されたそう。
見てる最中に、なんか解像度の低い作品だなぁと思ってたんだけど、
そういうことなのかな?
味のある映像だった気がする。

# 演技・役者・キャラクター

邦画特有の演技臭さは、そこまで嫌な感じではなかった。
割と許容範囲な感じ。
精神科医のあの距離感はちょっと独特かな。

# 共感・感情

女性の不条理な、ヒステリックな感情の爆発を見るのはほんとにしんどい。
感情の爆発の対象が自分だった時のことを思い出して苦しくなる。
(あれがPMSが原因だったかどうかは知らないけど)

劇中でもそうだったけど、突然キレるからはじめはみんなポカンとする。
でも当の本人はもう感情を制御できないから、喚き散らすし手に負えない。

PMSが原因だったとしても、だからって自分はその人に優しくはできない。
当人も傷ついてるかも知れないけど、こっちだって同じぐらい傷つけられてる。

そのストレスのせいで自分はメンタル疾患を抱えることになったし。

だから、PMSがひどくて苦しんでる人たちのことはとても同情する。
でも正直、藤沢レベルの感情が制御できない人には、もう怖くて近寄れない。

パニック障害は、ほんとに大変だと思う。
自分もパニック発作を1度経験してるし、
なんならバイクの運転中だったからほんとに死ぬと思った。

あの発作が、いつどのタイミングで来るか分からないなんて、恐怖でしか無い。
そういう意味では、栗田科学の周りの人たちがいい人で、
発作が起きた時にも優しく対処してくれるっていうのは、心理的安全性としてすごく高いと思う。

だから山添が最終的に栗田科学に残ったのは、居場所が見つかって良かったねと思う。
周りの人たちの支えもそうだけど、きっとプラネタリウムっていう物にも強く惹かれてたっぽいし。

# 総評

「メンタル疾患の治っていく様子を見てほしい」っていう情報をもとに見てしまったので、
「治ってないじゃん!」と思ってしまったが、
でも周りの人が支え合って行きていく、自分の居場所を見つけるっていうテーマはすごく良かったと思う。

でも、答えのないものを見せつけられた感じがして、
結構モヤってる。
自分が明確な答えを求めすぎなのは分かってるんだけど。
この映画をどう受け止めていいか、やっぱわかんない。


# 追記

オフィシャルサイトのStoryに「自分の症状が改善されなくても、相手を支えることはできるのではないかと思うようになる」と書いてあった。

やっぱり症状が治るっていうことより、「支えあう」事がこの映画の主題だったんだな。
ある人のレビューの"治っていく過程を見ろ"という言葉に引っ張られすぎた。
そう思ったら、ちょっと採点変わるなー。

支え合いであれば、山添と藤沢、栗田社長と山添の元上司のグリフケアの会、栗田科学の社員同士の支え合い、藤沢とお母さんの介護など、「支え合い」に溢れた作品だったなと思う。

あー、これだけのことで、映画の受け取り方全然変わったな。
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