D

哀れなるものたちのDのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

# ストーリー

だいぶ狂気じみた内容だし、18+の内容だし、悪夢のようだったけど、
なぜかとても美しく、最後にはめちゃくちゃおもしろかったと思えた。
パンフのインタビューにも書いてあったけど、「解放」がテーマなのかなと。

幼児の頭脳からしたら世の中は不思議なことだらけで、
好奇心の塊のようなベラが、異常な早さで知識を吸収し大人になっていくのがホントに不思議。
気づくと会話が普通になってて、あれさっきまでなんかたどたどしい口調じゃなかった?みたいな。
久しぶりに会う親戚の子供の成長を2時間強に凝縮した感じ。

きわどいシーンはたくさんあるけど、
すごく動物的というか、本能的というか。
普通はゆっくり学ぶ社会の常識みたいなものをすっ飛ばして性の成長もしてしまうと、
ああ、たしかにそうなっても不思議ではないなと思ってしまった。

夢の中の出来事のように、ありえないことばっかりではあるものの、
自由奔放に生きて、自分の人生を自分で決めるベラを見てるとすごく勇気をもらった。

# 映像・音楽

音楽がすごい。すごく不協和音というか、
すごく不安になるし、不気味な感じがする。
サントラあるのかな。あの音をそれだけでもう一度聴きたい。

映像はめっちゃきれい。
パンフを読んで、それCGじゃないんだ???
みたいな発見があって面白かった。

船のシーンでは、背景となる海と空はLEDスクリーンらしい。合成じゃないんだ。びっくり。

「最近の映画って、結局CGなんでしょ?」と思ってしまう自分がいるけど、
いろいろ調べるようになって、まだまだリアルな質感にこだわってる監督が多いことに最近気づいた。

あとすごいのは衣装。めちゃくちゃオシャレ。
これもパンフに書いてあったけど、ある時代をベースにはしているけど、
ファンタジー要素があったり、いろんな時代のものが混ざってたりするから、
衣装にもそれがよくあらわされていて、めっちゃおしゃれ。
ベラの成長に合わせて衣装もちょっとずつ大人っぽくなってくのもすごいなと思った。

# 演技・役者・キャラクター

個人的には、ハルクのマーク・ラファロがダンカン役なので、裸のシーンはちょっとドキドキした。(もちろん大事なところは見えない)

でも他の男性のは無修正のシーンもけっこうあったので、なんかそういう大っぴらになってる映画を久しぶりに見た感じで新鮮だった。

というか、エマ・ストーンさんこの役引き受けたのすごい。体当たりすぎる。

キャラクターはみんなすごく個性的で、
意外と好きなのは船で出会うマーサおばさん。
彼女のおかげでベラはすごく成長したんじゃないかなと思う。
髪型もおしゃれだし、ダンカンに海に投げられそうになるときも「あらあら」みたいな感じで慌てないし、あの動じない感じがすごく好き。

意外とベラのシモに関しての質問にもちゃんと回答するし。

# 自分の共感・感情

世界観が独特で、はじめは白黒で、初めての性交渉でカラーになる。
だから、これはベラの視点から見た世界で、
(我々と同じ世界に住んでる人物だけど)ベラからはこう見えてるっていう表現なのかなと思った。

でもパンフには、「ベラが住む世界を作る必要があった」とある。という事は、自分の解釈は、近いようだけど、やっぱり世界としては架空世界の話なんだろうな。

パンフでは、「女性」っていう部分が結構フォーカスされてる。
でも、自分はそんなにジェンダー問題を描いてるって感じはなく、
あくまで「ベラの物語」として見てた。

もちろん、女性が虐げられてきたことの典型例などは一部描かれているけど、
このベラの物語を、そこまで拡大して解釈するのはなんか違う気がした。

# 総評

はじめはグロ表現もあるし、変な映画だなと思ってたけど、
最後にはすごくスッキリした気分になった映画だった。

でもその「スッキリ」した意味が分からない。
だってあんなにエログロしてるのに。

すっごく不思議な感覚。脳内麻薬でも出てるんだろうか。
サブスク配信されたらもう一度観たい。

# 追記
インタビュー動画で、「撮影の順番が前後しても、その段階でのベラをエマは完全に演じきった」って言っててハッとした。
そうか、撮影は必ずしも本編の時系列順に撮影するわけじゃないから、ベラがどこまで成長してるのかに合わせて、その時のベラを演じるのか!と知った時、俳優のプロフェッショナルな部分ってほんとにすごいなと思った。
D

D