元空手部

PERFECT DAYSの元空手部のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.0
親しみやすいアカウントを目指しながらもどんどん気取った訳のわからないレビューになっていきながら、それでもやめられない今年一年。プロフ欄にもある通り気軽に絡んでください、来年こそは楽しいコメント欄のやりとりを目指します。つまらないならつまらないと、コメントしてくださるだけでも嬉しいです。


カメラの揺れや視点ショットの多さが特徴的な作品だった。視点ショットのほとんどは役所広司の顔のアップと結びつくことで役所広司の見たものと提示されるわけだが、あるショットを境にして変容していく。
物語後半、いつものルーティンを描写するショット群の中で、アパートを出た役所広司を捉えるショットがアパートの中から撮影される。さらに、マイクまでアパートの中に設置されており、隔たりが生じている。つまりはこのショットは外面の表象を止めることの表明だ。

さらに、ラストに近づくにつれて表現主義的な様相を呈してくる。例えばバーの女将の元夫と役所広司の対話では後景の強烈なフォーカスにより、川の後景それ自体が全く異なる表象に近づいている。
そしてラストショット。緩やかな固定ショットにズームが加わることで運転は移動としてのアクションから切り離される。そこに表象される役所広司の顔も、決して捉えられない内的意識を演技により換喩したものとなっている。あの感動は、換喩による痕跡でしかない涙でのみ把握可能なのだ。
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