Shintaro

アリーテ姫のShintaroのレビュー・感想・評価

アリーテ姫(2000年製作の映画)
4.4
『この世界の片隅に』を観てオォーってなったら人なら是非観て欲しい。
知人に『マイマイ新子』を教えてもらわなかったら『この世界』も観てなかっただろうし、こんな傑作もスルーした人生を送ったんだろうなと。

なんて言うのか、涙ではない底知れぬ感動があります。
監督はもうこの頃から”物事は全て知り尽くすことからだ”精神で 中世というおとぎ話特有の曖昧な世界観でも、人間が営む生活に関しては徹底して演出に盛り込みますね。
陶器を作ったり生地を染色してたり、城下町の様子をオープニングに持ってくるあたりから気概を感じ、絵空事ではないとこっちも集中してしまいます。
アリーテ姫が見下ろすその街では、家族が死んだり罪人が裁かれたり子供達が育っていったりするのです。
”あんな子供ですら自分の生き方を知っている…”
ただ”羨ましいな、自由になりたいな” とではなく、知識を身につけてもどう自分を生きれば良いのかすら分からないと苦悩しているのがよく伝わります。
そんなアリーテが、忍び込んできた王子達に返す言葉や魔女の残した”人生に意味があるとでも思っているのかね?”という意味深なセリフ など、意表を突かれるような展開がいくつもあります。

物語は原作がもつ”おとぎ話感”を上手くリアリティある作品に仕上げています。
悪い魔法使いブロックの結末やアリーテの成長、魔法と科学の概念など それぞれの点で観る人それぞれの感じ方がきっとあると思います。
演出の妙で、限定されたドラマに対し壮大な投げ掛けをしてきます。
アリーテの憧れが成就するといったことではなく、彼女が精神的に閉鎖されたところから解放されていくのを見届ける壮大感を感じるわけです。

そもそもキャラの一言一言が凝っていて耳に残りますね。声優さんも個人的に好きですし。
アニメはこれだからいくつになっても楽しめます。傑作です

関係ないですが、久しぶりに『パルムの樹』を今度見返したいと思います
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