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私の頭の中の消しゴムのmireiのレビュー・感想・評価

私の頭の中の消しゴム(2004年製作の映画)
3.7
「私の頭の中の消しゴム」イ・ジェハン監督 2004

出会い方が無愛想でマナーが悪く相手の事をあまりよく思わないと言ったものは韓国映画では多い気がする。
猟奇的な彼女もそうだ、彼女があまりいい人ではないように見えてしまうが、何故かそんな彼女に惹かれてしまう。
そして彼女も無口な彼に惹かれてしまう。そして二人はもう一度、もう一度と何度も出会う。いつの間にか付き合っている。
だがこのような幸せな時間は長くは続かなかった、よくありがちな韓国映画だと思う。だがこんなありがちな作品が私達の心を強く締め付ける、映画が終わった後もその続きのストーリーを考えてしまうほどだ、これは記憶をなくしてしまう彼女のお話。
2004年ともあってファッションがかなり古いものになる、シンプルでジーンズの形もかなり古い下幅が広がっている。今この時代にはあまり見ないだろう、これらはオールドファッションだ。
髪型もストレートで真っ黒、前髪がない。今でもそういうスタイルがあるが、メイクも違っていた、アイラインは黒く、目の周りのメイク比較的黒を使う暗い感じだ、今はどちらかというと明るい色(ブラウンやピンク)を使って涙袋を強調し前髪もシースルーというものがある。
こうやってファッションやメイクだけでも時代が流れている事を感じる事が出来る。
話が進むにつれ、彼女のもの忘れを激しくなる、若年性アルツハイマーというものは進行がとても早いという。
「肉体的な死より精神的な死が先に来る」この言葉はとてもきつい。
愛する人を忘れてしまう、自分が今まで生きていた事を忘れてしまう、自分で自分を殺してしまうような感覚だ。
アルツハイマーと告げられて、それを1人で考えながら街中を歩く彼女、声を殺しながら泣いている姿、顔が真っ赤になる、この芝居はとても素晴らしかった、私もそれを見てギャンギャン泣いてしまった。
韓国人は感情の表現が本当に豊かだ、そして美しい、彼らは普段から感情という物をむき出しにしてよく生きている。
日本人とは少し性質の違う生き方だと思う、それが芝居にも違いとして出てくるのだろう。
いつかこの手品のことも忘れてしまうのだろう、彼の好きな手品と私が好きな彼のセリフ、彼の手つき、いつも間違えてしまう選択肢、考えるだけで込み上げてきて、トイレで声を枯らして泣く彼女。
大好きだからこそ、このことを伝えたくない、伝えてしまうと彼が全てを捨ててしまう程に私に尽くしてくれるから。
愛しい人のために、自分を犠牲にする芝居、やはり惹かれてしまう。
私もしてみたい演目でできないだろうか。
韓国映画ばかりを観ているおかげで、全くハッピーエンドがない。
バッドエンドばかりを観ていて映画というものを観ているだけで、どっと疲れてしまう。だがそのバッドエンドというものが、リアルだからこそ、決して上手くいくばかりでは無い私達の日常と照らし合わせやすい、人生の教科書のように思える。
自分の人生を考えてみるきっかけになる時がある。映画が自分の人生を考えるきっかけになるなんて思ってもいなかった、一日一日何も忘れずに生きれている今を私は感謝しよう。
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