円柱野郎

マン・オン・ワイヤーの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

マン・オン・ワイヤー(2008年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

1974年、ニューヨークのWTCの2棟のビル間に綱を張り、地上417mで綱渡りをした男がいた。その男、大道芸人・フィリップ・プティと仲間たちの、計画と実行を描いたドキュメンタリー作品。
フィリップはこのWTCでの事件の前にもノートルダム寺院などで綱渡りを決行しているけれど、不法侵入して大胆不敵な計画を実行するという点では犯罪である。本人らも自覚してその犯罪を行っているわけだけど、WTCで非合法にそれをやるというのは、もはや頭がおかしいとしか思えないわけで…。でもフィリップには目立ちたいという思いよりも、「そこに山があるからさ」的な執念のようなものの方が先に来ているのだろう。もちろん、やっぱりこれを決行するのはまともではないとは思うけれど、それを成し遂げたという事実は感動に値する。
その事件で、彼らが不法侵入するためにスパイや怪盗さながらに準備を進めていく経過を、再現ドラマやインタビュー、当時の映像などを交えて描いていく。ドキュメンタリー作品ではあるけど、そのあたりの構成がドラマチックで興味深い。あまりに大きいことを成し遂げたがために、その後、仲間は心が離れバラバラになってしまったというけれど、当時を思い出しながら語る関係者の表情は楽しそう。しかし仲間の一人、ジャン・ルイが感極まって目頭を押さえる様子を見ると、単純にそれだけではない思いが感じられるね。
そして、この映画は綱渡り事件を描いている一方で、在りし日のWTCに対する望郷の念を感じさせる映画でもありました。
円柱野郎

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