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窓ぎわのトットちゃんのRickのレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
4.4
 子どもの世界には、もちろん楽しいことも溢れている。美味しいものを食べたり、友達と遊んだり、家族と触れ合ったり。でもそれと同じくらい厳しい側面も目撃して、その度きちんと考えて、学んでいる。生きることと死ぬこと、ものごとそんなに思い通りにはいかないということ、それでも見守ってくれる人もいること、大人だって失敗もすること、そしてある日を境に生活や行動が規制されるようになることもあるということを。今幼い子が見てもしっかりと受け取れるように楽しく、それでも誠実に厳しく黒柳徹子の幼い頃の世界を描きだしている。
 何よりもトットちゃん役の大野りりあなの演技が凄まじい。泣きの演技が多くなる中で、それぞれの場面での情感を的確に表現し切っているため、素直に心動かされる。声は実年齢に則した子ども特有の声色だが、おそらく今回のメインの中ではずば抜けて上手い。滝沢カレンも杏も非常によかったが。
 バイオリン奏者の父とエッセイストの母がいて、あの時代に東京で赤い屋根の一軒家に住めるほどの裕福な家庭。なかなか描かれることがないそんな家の子どもの日常生活が描かれる前半と、次第にきな臭く戦時中の気配が漂っていく後半、その間に時々挟まれる凝りに凝った空想イメージ映像。なんだか凄いものを見た。水中のシーンでは、今回のキャラデザから一転、原作でも使われている、いわさきちひろ風の映像になるところも趣深い。
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