A8

ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語のA8のレビュー・感想・評価

3.7
まさに短編小説にピッタリのストーリーは、短編映画でもピッタリハマっていた。

ウェスアンダーソンの無駄を排除し、無駄と思われる細かな細工が肝となる気持ちいい逆転現象が遺憾無く発揮されていた。

金持ちの主人公ヘンリーは、親の莫大な遺産を持っていたが、同時にいつ銀行口座がゼロになるかわからない謎の不安を常に抱えていた。あるパーティで訪れた屋敷で暇をしていたところ、書斎にあったある手記のようなものに目をつける。そこには“目を塞いでも、目が見える達人”の記録が書かれていた。
驚くことに彼の人生はこの手記によって動かされていくのである、、、この達人のようになると。

工場のように無機質で計画的な動作と仕掛けの中、淡々と進んでいくストーリーはどこかストップモーションアニメを観ているかのように感じるのがどこか心地よい。
そして予想の斜め上をいく展開の数々はさすがである。

金が有り余りすぎて稼ぐことに魅力を感じなくなったヘンリーは“何かいいことがしたい”ということでとりあえず窓から札束をばら撒くことに、、そして警察官から怒られ彼がハッとするというシーン。彼の世間知らずさと純粋さが垣間見れお気に入りである。

そこから人が変わったかのように“善”を積み上げていくヘンリー。好きなことが結局1番の天職というように、投資能力の練習、そして慈善のためのカジノロワイヤル、、。
彼の幸運は、金持ちで生まれたことではなく、夢中になれたモノと時間を得れたことだったのだろう。

好きなことをやれるっていいなぁ〜。
A8

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