真世紀

首の真世紀のレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.0
北野武監督新作。舞台は安土桃山時代。信長が今後、功績をあげたものに自分の跡目を譲ると公言したことに家臣らはどよめく。荒木村重の反乱から長篠の戦い、本能寺の変、山崎の戦いまでの時期を題材に、織田信長と家臣団のアウトレイジかつ衆道というかおっさんずラブ要素が盛られる。

そして、斬り口に沢蟹蠢く首チョンパ死体が冒頭から転がり、五条河原での妊婦も容赦なくな一族郎党斬首などが幾度も登場。人命も軽い中、いまや芸能、スポーツ界のようなかつては特殊とみなされていた界隈でも今は許されぬ風潮のパワハラ、セクハラが絶賛横行中な有り様を描く。

時代劇映画としての構えはキャスト陣、そして人数や馬なども揃えての合戦などの絵面といい、大作というにふさわしい。

その構えの中で展開される、首の扱われ方ほかブラックな笑い(実在の、信長に仕えた黒人侍・弥助も出てきて)。極限状況設定下でのコントだわなぁ。

衆道の要素のクローズアップは本作の特色ながら、信長との主従関係をそれだけに還元するのはどうかな、とは感じた。BLボーイズラブという言葉に似つかわしくなく、加瀬亮49歳が満年齢47歳で本能寺で落命した信長に近いものの、たけし76歳の秀吉はじめ他は年齢高め。そんな中、荒木村重の遠藤憲一62歳、明智光秀の西島秀俊52歳が褥を共にしたり、信長がなんかジェラシー燃やしていたり。

実際、秀吉は女好き、家康は後家好みだったりとセクシャリティは様々だったわけで(てなわけで画面にいないわけではないけど、本作、女性の姿はほぼ薄いです)。

キャストでは、木村祐一の曽呂利新左衛門。てっきり、黒澤明監督「乱」でのピーターみたいに道化な役割なのかなと思いきや、思い切り、陰謀劇渦中の使われる側のプレーヤーだったりと活躍。

中村獅童の首取りでの成り上がり志望百姓、六平直政のオイオイな安国寺恵瓊なども印象的。

余談、あの断崖突き落としシーンは「狼たちの街」からだろうなぁ。
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