真世紀

救いたいの真世紀のレビュー・感想・評価

救いたい(2014年製作の映画)
3.4
ようやくの新年一本目、年明けぐらいは通常運転のエログロバイオレンスアクション首チョンパ傾向な映画以外で行こうかなと。NetflixやAmazonプライムは酔って寝落ちして途中までの作品が幾つか有るので、珍しくAbemaから「詳細情報」も開かずに手術着の鈴木京香さんと白衣三浦友和の映ったサムネイルとタイトルだけでセレクト。ぶっちゃけ、女医ものでタイトル、キャスト共に失念だった「いしゃ先生」(と今さっき調べて判明)と勘違いした節もある。

アベマリア流れる冒頭、空撮での仙台市街。主要舞台の一つとなる仙台医療センターが映し出される。流れていたのは、実は手術室のBGM。患者に麻酔がかけられ、手術中に襲う揺れ。麻酔科医(貫地谷しほり)が踞って手術室を離れてしまい、代替で入る医長が鈴木京香さん。

東日本大震災から三年という設定。京香さんの夫が三浦友和。自身が院長を務める病院を閉めて仙台から離れた漁港に診療所を開いて診察にあたり続けていた。京香さんも週末に診療所に通い、手助けする。

この夫妻と貫地谷さんら周辺の人々を通じて震災からある程度の時が経って喪失を抱えつつも、魚介類の加工場を再開したり、地域の祭礼を復活させんと兄の遺した笛を口にお囃子の練習に励んだりと生きる被災者の姿を描く。

そんな人々の一人、三浦友和の診療所を手伝う看護師に中越典子。夫を失うも義母(藤村志保さん!)と同居を続ける。終盤でのこの二人のシーン、小津作品「東京物語」での笠智衆と原節子をも思い出させて、ここはつい泣いたな。

前述の通り、予備知識ほぼ無しで観始めたもので、まさか能登地震がいまだ被害の全容がつかめない中、津波の記録映像の突如の作中引用もある本作をこのタイミングで観るとは思わなかった。今、苦難の最中の能登でこんな映画が撮れるような状況がいつか来ればとついつい。

宮城県でのオールロケ作で撮影当時の各地域の姿がこうして残り、時を経て観られるのは風化や忘却に抗うことも時にはできる映画ならではのよさではある。

原作の著者が麻酔科女医で、外科医などと違ってあまり正面から描かれることが少ないその役割も伝える。なお、「一番高い麻酔にしてくれ」と術前に注文をつけるオペ患者に宅麻伸。いかにも友情出演という、ワンシーン登場でありました。

正直、いわゆる「良心的な映画」の範疇を超えてくる作品ではないが、太平洋戦争などの戦災と並び、阪神淡路大震災、東日本大震災といった自然災害を同時期やその後と時々にどう描いていくかは邦画が宿命的に向き合う課題だよなと改めて感じる。
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