鹿伏

PERFECT DAYSの鹿伏のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.2

「影踏みしましょう」

禅ムービー
企画の成り立ちから企業案件の雰囲気がすごくて、スタイリッシュで日本のみならず外国にも誇れるトイレの守護聖人をPRとして描きたかったんだろうなあ、カンヌから帰ってきてまっさきに報告へゆくのが小池百合子であることからも(そもそもがTHE TOKYO TOILETだから仕方ないにせよ)…など思うし、極端に脱臭・漂白された、まるで日常のように見える非日常を役所広司は見事に務め上げたよという感じだ。でもそういう背景すらぜんぜん関係がないくらい美しい作品だった

木漏れ日、オシャレトイレ清掃員の、同じように見えるけど実はちょっとずつ違う毎日。見ず知らずの他人のために奉仕を惜しまず、おそらくいいところの生まれだろうに自らこの清貧な暮らしを選んでいるということ……セリフが極端に少ない平山というキャラクターをささやかな所作だけでその輪郭を描き出した役所広司の役者としての存在感が浮き彫りになった120分だったな。あの顔ドアップの長回しのなにもわからないのにこちらの感情へ訴えかけるすさまじさよ

ユーモアもあって希望に満ちてるはずなのに底をずっと哀愁が流れてる。「この世界は ほんとはたくさんの世界がある つながっているようにみえても つながっていない世界がある」というのが作品の核にあって、そのセリフが出る前だったけれど「Spotifyにあるかな?」「どうかなあ どこにあるのそのお店」の会話で本当に泣きそうになる、理由もわからないけど
鹿伏

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