鹿伏

落下の解剖学の鹿伏のレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.7

「確信したふりじゃない 決めるの」

情報後出し法廷バトル!
この設定が最大限に活きてくるよう丁寧に情報を出す順番に心を配って(本編的にいうと話す順番をあらかじめ決めて)生み出された脚本を見ろ!!という感じだった。信頼できない語り手というか事前情報がいっさい排除されているので、登場人物たちへの理解が固まりかけたところでちゃぶ台がひっくり返されるというかいやいや知らないって!みたいに揺られて完全に傍聴人だった。解剖する落下、夫はもちろんのこと夫婦仲のことだったんだな。法廷でつまびらかにされてゆくセクシャリティや不貞や欺瞞、たしかに事実が切り開かれてゆくさまは解剖のようだし良いタイトルだけどウェ悪趣味〜〜!

ひと箇所を除いて回想つかわない胆力よ。そのシーンさえ口の動きはあれど音声はダニエルのもので、そしてあまりにも主観すぎると切り捨てられるある種の公明さ、ここに揃えられた客観的な情報だけであなたたちも選んでくださいねと提示されてる。長尺の喧嘩は自分の両親を思い出して最悪な気分だったけど、あれもあくまで音声に則ったほぼ間違いない再生であって、実際に殴ったり叩いたりといった場面は証言のみになってる。たぶん自殺だと思うんだけど(「もう死んでやる!」「あっそ好きにすれば」みたいなやりとり)、それにしたってここから母と子どもが再生していけるとは到底思えないんだよな、選んだとはいえあの家の状態から拒絶などできるとは思えないし最後の抱擁もむしろダニエルが支える側で究極に自分本位では…?など。合意のもとの不倫なわけなくない??

夫側に同情する気持ちは強いけどやっぱりいつまでもワナビじゃあね…という。ロンドンからわざわざ母国に戻ってやろうとした民宿はうまくいってなくて(それも書くための時間を得るためにだったからなおのことつらい)。あと両親の母語が違う、そして子どもが育つ国すら違うから家では映画というのも今っぽいんだろうな。でも、事故の責任を感じで心が弱くなっていたとしても、妻がまーーーた不貞をやらかしそうな状態であったとしても、視覚障害があって耳に頼るしかない子どもがいる家で会話が聞こえんくらいのでかい音量で音楽かけるなや(よくあるとサンドラは言っててそれを信じるならなおやばい)、スヌープが不和の気配を察してダニエルを連れ出したとしか思えん

スヌープは最高に可愛かった。アスピリン食わすな
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