日常を愛おしく生きる。
淡々と、そしてしみじみと…
その尊さを
ただひたすら噛み締める
幸せな2時間。
トイレ掃除を生業とする平山。
黙々と丹念に掃除する
美しい所作に見惚れる。
仕事を終えて、自転車を漕ぎ
大衆酒場で1人酒を飲む
ささやかながら至福の時。
眠る前には好きな本を読み
静かに思いを馳せる。
決して大きな出来事はないが
日常の一瞬一瞬に
キラキラと木洩れ日のような
揺らめきと光を感じる。
過去に残してきた
大切な人、愛、想い…。
ある時、突然
「現実」に直面した平山の心が
ザワザワと揺れる。
「この世界は
つながっているようで
つながっていない。
人は別の世界に生きている」
境遇は違えど、平山と同じように
心に傷を抱いた男性の問いかけ。
「影って重なると
濃くなるんですかね？」
失ってしまった人とのつながり…
別れ、離れてしまれば
すべてなかったことになるのか？
そこにあった愛おしい時間や
心の奥にしまった大切な想いは
どこに流れ着くのか？
2人の“影踏み”。
無邪気にいたわり合うその姿に
慟哭が込み上げてきた。
「今度は今度。今は今。」
時間の刹那を思い知るからこそ
「今」を大切に生きる。
切なくも愛おしい日々の営み。
ただ、生きることの喜び。
平山が、晴れの日も雨の日も
そうしていたように
私も毎朝、出かける時
空を見上げよう。
今日だけにしかない幸せを
必ず見つけられるように…
そして、今までのすべての時間に
感謝できるように。
今日も帰ろう。
私の愛おしすぎる日常に…。
ありがとう、世界。
