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哀れなるものたちのnori8のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.8
体は大人、頭脳は赤ちゃん
いわば、コナン君の逆パターン⁉️

人生に行き詰まって
自ら身を投げた女性が
マッドドクターの手により再生。
人間関係やしがらみ、
知性・理性を完全にリセットして
生きたらどうなるか?
という壮大なメタファー。

エマ・ストーン演じる
主人公「ベラ」
食べ物を吐き出し、皿を割り…
まさに赤子のごとく
本能のままに振る舞う。
やがて、自慰行為をきっかけに
性の快楽に目覚める。

自分の成長を見守る
若い研究者と婚約するも
興味本位で、インテリぶった
“金満男”と「冒険」の旅に出る。

男は性のレッスンで征服欲を満たし
「ベラ」に社会的良識を強いるが
未熟でピュアなままの「ベラ」は
ヒステリックに反発し…
今度は大海原に「航海」に出る。

そこに乗り合わせたのは
「哲学」を愛する初老の高貴な女性と
現実主義の若き黒人男性。
女性の知性あふれる言葉に
興味を示す「ベラ」に
「人間は獣として生まれ
 獣として死ぬ。騙されるな。」と
男が諭す。

やがて、パリの街で娼婦となり
体を資本に金を稼ぎながら
自らの「価値」を推し測る。

自慰➡️婚約➡️冒険➡️娼婦
目まぐるしい変遷と共に
女性として心身ともに成長を遂げる
「ベラ」。

“金満男”は、ひょんなことから
金も「ベラ」も失い狂気の沙汰に…

金、地位、インテリジェンス…
まやかしの鎧を来た「大人」たちの
化けの皮をピュアな感性で
ぶっ壊しまくる“最強サイボーグ”と
化した「ベラ」。

そして、ついに…
自らを絶望に陥れた“宿命の男”と
再会を果たし、復讐の鬼となる。

劇中、転機が訪れる度に描かれる
激しくも狂おしい
「ベラ」の“性戯”。
「熱烈ジャンプ」との翻訳が秀逸(笑)

駆け引きなく、あくなき快楽を
求める「野生」むき出しの行為に
エロスというより「侍」のごとき
勇敢さと清々しさを覚える。

女優として、文字通り
一皮むけたエマ・ストーン。
決してグラマーでも母性的でもない
その体が、主人公「ベラ」の
暴力的な実直さにかえって
説得力を与えている。

「ベラ」の衣裳・歩き方・言葉…
成長と共に変化する、それらを
繊細なニュアンスで表現する
技量に感服した。

片や、鮮烈な色使いと
複雑に交わる音の魔術により
単なる「エログロ」に見せない
監督の手腕が光る。

サイコスリラーであり
ファンタジー。
悲劇であり喜劇。
その絶妙な“綱渡り”を
体当たりで演じきった
エマ・ストーン。
アカデミー「女優賞」は固い。

ラストシーンとエンドロールの
余韻が、じわじわと後を引く。
「哀れなるものたち」の1人として
そっと懺悔の祈りを捧げます。
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