男はいつも
女々しさをひた隠し正論を語り
女はいつも
強かさをひた隠し平静を装う。
互いにスネに傷を持つ
“倦怠期”の夫婦の
もどかしすぎる
日常の足し算と引き算。
ガラスケースの中に
透けて見える本心に
気づかぬフリをして
贖罪の綱引きを繰り返す毎日。
夫婦だから守るべきルール。
夫婦だからめくれない
最後の切り札。
この息苦しさの中に
勝者はいない。
ただ、ひたすら息を止め…
やがてどちらかが根負けして
死ぬのを、いや罪を打ち明けるのを
待つしかないのか？
ひとり、温泉の湯に顔を埋め
そして夫の前で
ついにすべてを「告白」する妻の
恍惚にも似た“解脱”
重苦しい…
でも、この重さ、
誰もが知ってる。
無音のエンドロールに
かすかな男女のため息が響く…
劇場を出て、都会の喧騒に
まみれてもずっと尾を引く
耐え難いダルさ。
あ、これって
現実のタネ明かしだったのか。
家に帰って
いつも通り微笑みながら
妻の顔を見る。
やっぱり、どこかほつれてる。
