maki

PERFECT DAYSのmakiのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.9
モノや欲に溢れた世の中における、ある種の究極的な都市型ていねいな暮らし…とでもいうのだろうか。

習慣化された日々の過ごし方と、自分に本当に必要なモノやコトを大切にし、風呂や洗濯、食といった持たなくても外で賄えるもので暮らすトイレ清掃員の平山。
ルーチンを繰り返すような日々だからこそ、1日として同じ日はないことを理解し、毎日に心を揺さぶられている平山に、もれなく私も、どこか豊かさを感じてしまう。

渋谷でのトイレプロジェクトからの一連の流れが明け透けで、なんだか足が向かなかった本作。作り、使い、管理することを徹底的にデザインしている流れは大事なことだけれども、そこに見える資本の配分や強い権力がどうにも頭にちらつく。

ノスタルジーとして昇華されるカセットテープやフィルムカメラと、汚いものとしてのイメージを脱却すべく新しくつくられた公衆トイレ群や清掃員へのイメージ。生活文化(?)の力強さと、デザインが持つ一種の暴力性さえ感じてしまったけれど、でも、これが通用するのが東京なのかもしれない。

公開後2度会った近所のお店のご主人に、「見た?」と聞かれて以来、本作見るまで次にお店へ行けないな…という謎プレッシャーから解放されたと同時に、本作から受け取った様々な矛盾する感情にただただ戸惑う。
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