オレオレ

メイ・ディセンバー ゆれる真実のオレオレのレビュー・感想・評価

3.0
思わせぶりなジュリアン・ムーアとナタリー・ポートマンのジャケ写が気になっていたので見る。
ボタンを掛け違えた、というほど明らかな不快感というより、ブラの肩紐ねじれたままだった、とか弁当のタッパーの角が一か所だけちゃんと閉まってないとか、そういう小さい不快感が最後まで続く映画だった…が、ゴールデングローブ賞ではコメディ/ミュージカル部門でノミネート。コ、コメディっすか?

女優のエリザベス(N.ポートマン)が南部ジョージア州のサバンナに住むグレイシー(J.ムーア)、ジョー夫妻の家を訪れるシーンからスタート。
20年以上前、13歳だったジョーと関係を持った既婚者子持ち36歳のグレイシーをエリザベスが映画で演じることになり、その調査のための訪問であることがわかる。
スパニッシュモスが垂れ下がる大通りを進むエリザベスのレンタカー。陽光は街路樹とモスで入り乱れ、異世界に踏み込んでいく気分にさせられる。
到着した異世界は、ありふれた年の差カップルのグレイシーとジョーが住む一軒家で、ありふれたBBQが行われているようにしか見えない。
グレイシーは刑務所でジョーの子供を産み、出所後は結婚してさらに双子を設けたカップルだが、コミュニティーにも受け入れられており、BBQにも友達や子供の同級生も普通にやってきている。
これがなー、スゴイって思った。
グレイシーの元夫も地元にいるし、元夫との間の子供はとっくに成人していて、自分の子供の同級生の子供(グレイシーには孫)がいるんだよ!
親は身から出た錆だし強心臓で何とかなるかもしれないが、子供って学校とかでめちゃくちゃ居心地悪そうな気がするんだが・・・
だって、自分の親がセックスオフェンダーとして、誰もが見られる公共情報としてリストされてるんだよ!一生!
まあ、子供たちのことはあまり触れられない。いかにジョーが彼らの父親というより、彼らの年代に近いかという比較と、彼らが謳歌している普通のティーンの生活がジョーの人生からぽっかり抜けているかという比較以外には(子供にポット教えてもらう親!)。

ジョーはティーンの生活が抜けていて、グレイシーとジョーの関係は親子っぽいところもある。
BBQ後、そのままベッドに入ってきたジョーに「煙くさい!」というグレイシー。「ごめん」とすぐTシャツを脱いでベッドに入るジョー。まだ文句を言うグレイシー。
「脱いだ靴下は洗濯籠に入れろ!」と言われているティーンと母親でしかない。
と、母親のような態度をとるかと思ったら、「ケーキのオーダーがキャンセルされた」といってさめざめと泣いたり。
ジョーはセリフも少なく、当事者の割にはエリザベスにあの時はこうだったああだった、とうるさく言うわけでもない。映画のほとんどの部分で背景の一部という演出になっている。
なので、屋根の上で大学に行くために家を出ていく(出ていきたくてたまらない)子供に吐露してしまう心情や、最後、グレイシーに対峙する彼のセリフが切実だなあと思った。
ついに、ジョーも育てている蝶のように羽化して飛んでいくのか・・・

高校の卒業式に着ていくドレスを娘と買いに行くシーン(ノースリーブを選んだちょっと太めの娘に、「その腕を出せるモダンな時代のモダンなあなたを自慢に思うわ!」と嫌味を言うグレイシー)や、自分が使っているコスメを見せるシーンなどで多用されるミラー越しの会話。
赤毛で色白なジュリアン・ムーアと、黒髪ユダヤ系のナタリー・ポートマンが似ているはずもないんだが、なんだか二人がそっくりに見えてくる。
メンヘラでコントロールフリークでセックスオフェンダーな主婦なんだが、自分を普通の主婦としか思ってないグレイシー。
そんなグレイシーに似てくるエリザベスは、女優として似せるための努力のたまものなのか、彼女にもその素地があるのか・・・

それにしても音楽がメロドラマくさくてイマイチだった。登場人物が特殊過ぎて誰にも肩入れできなかったし。
あと、エリザベスの電話の相手やジョーのテキスト相手との会話はなんだったんでしょうか。
二人とも、表面に見える以外に不倫やら不倫の素地、いろいろあるって演出なのかな?そこ、回収してくれー!