オレオレ

父親たちの星条旗のオレオレのレビュー・感想・評価

父親たちの星条旗(2006年製作の映画)
4.0
イーストウッドの良作。まず、本人が出てきて無理やり恋愛しないのがよろしい。
こういうの作れるのに、「クライマッチョ」とかも作っちゃうんだよなあ・・・

誰もが見たことがあるであろう、第二次大戦の硫黄島でまさに立てかけられようとしている星条旗と複数の海兵隊員の写真。
実は、この「国旗掲揚」は二回目、すなわち、旗は二枚あった(なので、タイトルがFlag"s" of our Fathers)、という話。
知らなんだ・・・てか、この映画で知った人がほとんどでは?

映画では、戦時公債プロモーションのために全国ツアーをさせられる掲揚者兵卒3名の「本当の掲揚者でない」葛藤、硫黄島での戦闘、戦後数十年たっての回想が描かれる。
硫黄島のシーンは明度を極端に抑えてあり、島の不毛な感じがよく出ている。
そこにものすごい物資量で上陸作戦を行う米軍艦隊。戦争末期とはいえ、日米の物量の違いに唖然とさせられるが、守る側と攻める側、攻める側の不利は当然で、第二次大戦の総死者数のうち1/3が硫黄島だったとか。「プライベートライアン」で描かれるノルマンディー上陸作戦での米兵の戦死者数が2,500程度らしいので(連合軍としてはもっと多い)、それ以上の戦死者が出ている硫黄島。
なので血なまぐさいシーンも多いが、やはり圧巻は3人の葛藤、特にネイティブアメリカンであるアイラの葛藤が印象的だった。
公債ツアーの先々にはすごい人数が集まり、3人はあちこちでヒーロー扱いされる。なのに、ネイティブアメリカンであるために上層部からはからかわれ、バーでのサービスを拒否されるアイラ。
何よりも、仲間を置いて前線を離れた罪悪感や死んだ仲間の名誉を横取りしている気持ちになってどんどん酒に溺れ、ツアー会場にも酩酊で現れる。ただただ、「前線に戻してくれ・・・」と懇願するアイラ。
あの戦地に戻りたいなんてどうかしてる!と思うんだが、それほど、このツアーはアイラにとっては苦痛でしかない。

前述のとおり、現在と過去が入り乱れるので、誰が誰だっけ?と把握するのが難しいが、バリー・ペッパー(「プライベート・ライアン」での狙撃兵役にも痺れたが、今回も男気ある役!)、ポール・ウォーカー、ニール・マクドノー、ジョン・スラタリーなど、脇役も渋いのがそろってる。
そして、戦地で死んでいくのは二十歳になるかならないかの若者で、「あの頂上の旗をくれ!」と「国旗二回掲揚」の原因となった我がままを言うのがシミ一つない軍服にメダルをたくさんつけたおっさん達。

対になる映画、「硫黄島からの手紙」ももう一回見たいんだが、なぜかこちらは有料配信。なんでやねん、アマゾン!