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メイ・ディセンバー ゆれる真実のchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

4.5
30代半ばの女性が13歳の少年をレイプし投獄されるも、出所後にそのまま結婚し20年以上家族として暮らしたという、信じ難くも実際にあった事件から着想を得たNETFLIXの映画。いやぁ、これは本当によくできている作品です。サイコパスを描いているという意味ではアマプラのSaltburnと同じなのですが、このサイコパスの描き方は本作の方が数段上です。

まず素晴らしいのは、この映画の独特な作風が単なる監督の趣味ではなく、きちんとした意味付けがされていることです。観たこともないこの不思議な作風、昼メロを連想させるコミカルなメロドラマと、社会派のドキュメンタリーのようなシリアスさが見事にミックスしています。これは、この事件自体が、我々部外者から見れば昼メロを観ているような面白可笑しい「ストーリー」であるのに対し、巻き込まれている当事者から見れば深刻な「現実」であるということを表現しています。この構図は、最近のジャニーズやお笑い芸人の件でも同じですよね...

レイプ事件の衝撃の逮捕と出所後のグレーシー(ジュリアン・ムーア)とジョー(チャールズ・メルトン)の結婚から20年以上の時が流れた2015年の春、二人の出会いからグレーシーの逮捕時の物語が映画化されることになり、グレーシーを演じる人気テレビ女優のエリザベス(ナタリー・ポートマン)は役作りのため彼らの自宅を訪れます。そこでは、夫婦とその子供たち、そして彼らの家族や近所の人々が何事もなかったように平穏な日々を送っていました。スキャンダラスなこの夫婦がこのコミュニティではごく普通の姿として受け入れられていることに衝撃を受けたエリザベスは、その真相を探るべく取材を重ねていく...

エリザベスの学者の親の専門である"文化相対主義(=ざっくり言うと、文化によって「普通」は異なるということ)"というのが、重要なキーワードになっています。グレーシーは、少女のような病的な純粋さでもって本気で子供同然のジョーを愛していて、さらに家族や近所の人々も彼女に普通に接していることから、この異常な夫婦関係が彼女の暮らす世界の中では認められていると感じ幸せに暮らしています。ところが、実際には周囲の人々はこの夫婦の子供たちのことを考えて普通に接していたに過ぎず、子供たちの大学進学での巣立ちのタイミングでその"文化相対主義"という幻想は崩れる。

グレーシーは間違いなく精神異常者なのですが、同時にとても気の毒な女性にも思えます。Saltburnでは主人公の異常性と彼に対する同情がどっちつかずな感じがしましたが、本作ではどちらもしっかり描かれていて、とてもよきでありました。

演技もみんなめちゃよかった😊賞レースでは、メインの3人が目立っていますが、個人的にはグレーシーと前夫の間の息子を演じたコーリー・マイケル・スミスが印象に残りました。女性陣の皆様はちょっとがっかり?チャールズ・メルトンのヌードシーンは本物ではなく被り物なのですが、なんとその被り物のためお手洗いを9時間我慢しなくてはならなかったそう... 役者さんも大変です😅
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