ブルームーン男爵

落下の解剖学のブルームーン男爵のレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.8
ジュスティーヌ・トリエ監督の長編4作目。本作の監督ジュスティーヌ・トリエ監督は、女性監督としては3人目のパルムドール賞受賞者となった。アカデミー賞でも5部門にノミネートされている。

⼈⾥離れた雪⼭の⼭荘で、男性が転落死。ただの事故か?はたまた殺人か?転落の状況から妻のサンドラに殺⼈容疑が向けられる。第一発見者は視覚障害を持つ息子だけ。裁判が進むにつれて、徐々に家族内に内在していた様々な問題があぶりだされていく。ミステリーやサスペンスというより、法廷劇を中心としたヒューマンドラマである。様々な心理や要素が錯綜しており複雑な心境にさせられる。

タイトルの「転落」は、事故を意味するが、一方で、一度は愛し合ったはずの夫婦の関係が暗転してしまったという意味のダブルミーニングにもなっている。そして「分析」ではなく、よりグロテスクな「解剖」という単語を使うところもセンスが良い。事件から炙り出される家族の内部など、人体の解剖のようにグロテスクなものなのだ。

それにしても出演陣の演技の見事なこと。主人公役のザンドラ・ヒュラー、息子役のミロ・マシャド・グラネールはとにかく名演だった。そして愛犬スヌープ君も重要な役どころだったが、こちらは7歳のボーダーコリー犬のメッシ君で、「パルムドッグ賞」(カンヌ国際映画祭で映画に出てきた名犬に送られる賞)を受賞しているので、名犬の名演も必見である。