ホンのシネマ

落下の解剖学のホンのシネマのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

たまたま他の映画の予告で知って、なんの前知識もなく見に行った作品です。
どこの国の作品かもわかっていなかったんですが、見に行って大正解!
すごく面白かったです。

この作品なんと152分あるんですけど、やっぱりトイレが気になるわけですよ。
120分超えちゃうと。
結論から言いますと、トイレいく暇ないくらい夢中になっていました。


このお話、作家の妻と作家を目指している夫、4歳で事故にあい盲目になった11歳の息子、そして愛犬のボーダーコリーの一家がフランスの片田舎で暮らす家で、ある日夫が転落するところから始まります。
その夫が他殺か、事故死か・・・。
そして、その容疑者は妻。
作品のほとんどは裁判が行われる法廷での場面です。

結構法廷ものって私は眠くなっちゃうことが多いんですけど、この作品は違う!
その理由は以下の3つです。

・登場人物の人物設定が緻密
→まず、夫がフランス人、妻がドイツ人で、イギリスで暮らしていて、フランスに移住してきたってだけでも複雑。
それぞれの抱えている問題が単純ではなく、しっかりと描かれているわけではないので考える余地が残っています。

・裁判での戦いが見事!(検察側も弁護側も)
→どっちかが圧倒的に有利とか不利とかではなく、どちらの意見も「そうかも」と思わせる説得力があって、実際に傍聴している感じで見ていると、毎回妻が有罪と思ったり、いややっぱり無罪かなと翻弄されます。
特に検察側の坊主頭の検事が腹立つんだよな〜。
なんだか感情移入して裁判に入り込めたのが飽きない理由なのかも。

・愛犬の行動にも色々疑問が・・・。
→息子ダニエルの絶対的味方だと思っていた愛犬スヌープが最後は妻サンドラの傍へ。それまでそんなに懐いている様子もなかったのになぜ?


裁判で勝敗はついたけど、結局真相は藪の中って感じで、スッキリとはしないような。
とはいえ、考える余地があるというか、見終わった後も面白いというか、そういう作品でした。

ちなみに私の考えでは、ずっと妻は無実だったんですが、最後のシーンで「もしかして・・・?」とか思ってしまいました。

そう思いだすと、いろんなシーンで、「あれ? これってどっち? やってしまっているの? それとも違うの?」と思うところがたくさんあって、もう一度見返したいと思ってしまう。

夫との口論のシーンも出てくるんだけど、全くもって妻の言い分がしっくりきてしまう私は、きっと夫は自死を選び、嫌がらせで妻に罪を着せようとしたんじゃないかと勘繰ってしまいました。

フランス語と英語の混在が、妙に心地よく、息子の奏でる拙いピアノの音がなんだか不気味というか、違和感があって、作品の雰囲気を作り出していると思いました。
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