Scarlet

落下の解剖学のScarletのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.7
“五感で体感する最高の推理劇。
エンディングの後も?は続く”

何気ない雑談のようなインタビューシーンで始まり、事件が起こり、新たな展開からクライマックスに至り、最後にストンと、それこそ”落下”するように物語が終わる。

完璧な”起承転結”をやり遂げた感あり!と思ったが、監督はその先のトリックを仕掛けたかもしれない。

今までの仏映画は、(リュック•ベッソン監督のアクション物を除き)名作と言えど、必ずエンディングにモヤモヤが残った。

このモヤモヤこそが仏映画独特の個性であり、”vague “を好む日本人が仏映画を好きな理由かもしれないと思っていた。

本作はそのイメージを変えてくれた、と思ったのだが、暫くしたら、騙されている気がしてきた。
脚本の緻密さがそうさせるのだ。

ヒロイン、サンドラ(サンドラ•ヒュラー)の自宅である”山荘内と法廷”ほぼ90%がこの2か所での撮影だが、観客の想像力は、そこから無限に広がっていく。

映画というより迫力ある舞台を見ているように錯覚する。

記憶を可視化した映像、検証のために何度も繰り返される音楽、録音されたテープ(実際は、音声のみ)を可視化した、目が釘付けになる会話シーン。

どれをとっても、綿密に計算された視聴力効果で観客を魅了する。

縦軸は、殺し?事故?自殺?を解いていく推理劇。
横軸は、愛し合っていながら崩壊していく夫婦と親子の壮絶な心理劇場。
この交差点にいる私達は、探偵として、舞台を見守る観客として、ある結末を願っている事に気付く。

この事件で1番傷つき、悲しい思いをしたのは誰か?
その人物にこれ以上、不幸な境遇をあたえないで欲しい、と。

果たして、エンディングに仏映画独特のモヤモヤ感は残るのか?

サンドラを始め、キャスト(犬のスヌーグも含めて)達の演技力は、素晴らしい。

未鑑賞の方々、早く本作を”体感して、結末の意味を推理して欲しい。
Scarlet

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