このレビューはネタバレを含みます
“ライブ会場にタイムスリップ!全てがカッコ良い。”
トーキングヘッズの曲も、デヴィッド•バーンも知らず”サイコキラー”だけ予習して観たが、期待以上。
まず、カメラワークが凄い。
あまりにアングルが良すぎるので、ライブではなく、映画のためにフェイクのライブステージを撮影したのかと思うほど。
ラジカセ抱えて登場し、ギター1本とボーカルだけで圧巻のサイコキラーを聴かせるデヴィッド•バーン。
演奏中に、絶妙のタイミングで機材をセットするクルー。
2曲目は、ベースのティナ•ウェイマスが加わり、2人に。
また演奏中に機材がセットされていき、サイドギター、ドラムス、パーカッションと、曲を追うたびに1人ずつメンバーが増えていき、最後にキーボードが加わってフルメンバーになる。
この演出そのものが、計算されたカッコ良さ。
音の厚みがドンドン増していき、観客の興奮もクライマックスに達していく。
精密機械のようにキレのあるサウンドと、走り、踊り続けるメンバー達。
あれだけの声量で歌いながら、なぜあんなに踊れるのか?
デヴィッド•バーンのカリスマ的なパフォーマンスに釘付けになりながら、ずっと足でリズムを取っていた。
そして”エッと思うほどあっけなく終わるライブ。余韻さえ与えないドライな感覚。
本作の凄いところは、あくまでも”観客をライブ会場で体感させる”事に徹していること。
一言のナレーションも、一行の説明も解説もなく、ただライブのオープニングからエンディングまでのドキュメンタリーを圧巻のカメラワークで魅せたこと。
80年代は、音楽シーンも映画界も、才能の塊みたいな天才達が沢山いたのだと、
つくづく感じる。
今をときめくA24。
2024になってから、”僕らの世界が交わるまで”, “ボーはおそれている”に続き、3作目を観たが、”こんな事もできるのか?と
驚き。
何か加えたくなるのをグッと堪え、ただ一流の素材だけで仕上げると、こんなにもクールな作品ができるというお手本を見せてくれた。