Scarlet

52ヘルツのクジラたちのScarletのレビュー・感想・評価

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
2.8
“若者の死因トップが自殺の国。クジラたちはたくさんいるよ。”

“単一民族国家”で”先進国?”なのに、若者に冷たく、若者が生きづらい国。
悲しい事に、それが今の日本だ。

“みんなとおんなじ”が自然に出来て暮らしている人にとっては、これ程楽な国はないと思うが、ほんの少しでも他人と違うと、それが些細な違いでも、特別視されてしまうのだ。

貴瑚(杉咲花)は、親からの虐待と継父の介護で孤独。杏吾(志尊淳)はトランスジェンダー。そして母親から育児放棄されている少年、52(愛)。

本作の意図は明確で分かりやすい。

貴瑚も杏さんも少年も、みな社会から見放されたような存在で、助けを求めても、普通の人々には、その声は届かないし、その苦しみの存在さえ理解してもらえない。

杉咲花の天才的な演技力に支えられ、本作は感動を呼ぶ出来にはなっている。

だが、何故また、”虐待”と、LGBT なのか?
ここ数年の話題映画は、必ずと言って良いほど、このどちらかに行きつく。

若者の生きづらさの原因は、この2つだけであるはずが無い。

イジメによる不登校、それに起因した心の病、人間関係に対処できない、ヤングケアラー、虐待では無い、家庭内不和など、表に出にくい様々な悩みや苦しみがあるはずだ。

1人の若者の苦しみは、その家族も巻き込んで3倍にも4倍にもなる。

20~39歳の死因トップが自殺の国なんて、先進国(G7)では日本だけだ。

自殺者が年間2万人もいる国に、クジラたちは、実はたくさんいる。

私の息子は、イジメ、不登校、心の病を経験し、何年も居場所のない生活をしているクジラ。
その親である私も、同じ境遇の母親以外には絶対理解してもらえない、クジラ。

貴瑚や杏さんほど壮絶な人生でなくても、”みんなと同じ”でないだけで、生きづらいのを我慢して生きている人達に、本作は助けになっただろうか?
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