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落下の解剖学のmaroのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.5
2024年日本公開映画で面白かった順位:21/23
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★☆☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

雪山の山荘で起こった男の転落死。
これは事故か事件か。
そんなミステリー感漂わせる雰囲気を出していたけど、中身は家庭内トラブルが暴かれるヒューマンドラマのような内容だった。

この映画、いわゆる法廷モノを期待していくと面食らってしまう。
よくある被害者の死を巡って登場人物が全員容疑者みたいな。
複数のミスリードをしつつ、まさかのトリックによって明かされる真犯人みたいな。
そんな映画じゃございません(笑)
もはや事件の真相とか裁判の勝敗とか二の次。
最初は自殺か他殺か気になって観ていたけど、途中からどうでもよくなる(笑)
というのも、この映画で描かれているのは事件の真相を追うスリルではなく、どの家庭にもありそうな夫婦仲にまつわるいざこざだからだ。

家事の分担や子供に割く時間、自身のキャリアなど、証人や検事によって次々と公になっていく一家。
あまり他人に見せたくないような、ある意味家庭の"恥部"みたいな部分が、裁判員や傍聴者などの第三者に晒されるのは正直キツい。
タイトル通り、「落下を解剖していったらいろいろ見えてきました」ってことなんだけど。
裁判沙汰になったら自分もこうなるのかなと思うと、もう絶対品行方正を貫きたくなる(笑)

ただ、そこがこの映画の特徴で、永遠の愛なんてものはないというか、もともとは愛し合っていた男女が恋人になり、夫婦になり、両親となっても、結局は他人同士だから、相容れない部分はどうしても出てきてしまうよね。
「夫婦は唯一別れられる家族」みたいなセリフを日本のドラマでも聞いたことがある気がするけど、些細なことの積み重ねがいつか夫婦の間に大きな亀裂を入れてしまうこともあるわけで。
夫婦のような強い組み合わせでも人間関係は変わっていく可能性もあるという真理を感じる。
この夫婦の喧嘩シーンを観ると、中には耳が痛い人もいるかも?
個人的には、男性目線だからかもしれないけど、妻がかなり図太い神経の持ち主だなとは感じた。
時間がないと言う夫に「あなたに何も強制はしてないじゃない」と言い放つけど、夫がやらなかったらあなたはやるんですかって聞きたくなった(笑)

あと、この映画の7割ぐらいは法廷のシーンになるんだけど、とにかく弁護側も検事側も独断と偏見と憶測での発言が多くて、まったく説得力がない気がした(笑)
自分が裁判員をやった経験があるからかもしれないけど、本来はもっと淡々と事実のみを述べるんだよね。
海外だと日本とはまた違うのかもしれない。

そんなわけで、夫婦あるあるを裁判によって紐解いていくちょっと変わった切り口の映画だった。
尺が2時間半ととにかく長い上に、セリフ劇がずっと続いてくだけなので、観るなら体調万全のときをオススメします(笑)
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