社会のダストダス

落下の解剖学の社会のダストダスのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.0
法廷もので150分越えか…と観たいとは思っていたものの若干しり込みしていて公開初週は見送ったけど、やっぱり気になったので。話は淡々と進んでいく感じだけど、終わって観れば思ったよりサクサク進行して、あっという間というほどではないけど長すぎるとも思わなかった。

人里離れた雪山の山荘で男が転落死、妻で作家のサンドラに殺人の容疑が掛かる。第一発見者は視覚障害を持つ11歳の息子とワンコ。はじめは事故と思われたが、裁判が進んでいくなかで、夫婦の秘密やウソが暴かれ次第にサンドラへの疑惑が深まっていく。

時々観るフランス映画はハズレがなくて助かる、そういう作品しか日本に入ってきてないのかもしれないが。

主演のサンドラ・ヒュラー、ダニエル役の子役さん、そしてワンコの演技が特によかった。音楽の教科書に写真が載ってそうな弁護士や、第三の目が付いてんのかというくらい想像力と妄想力がたくましい理論武装した天津飯みたいな坊主頭の検察官も忘れ難い。

サスペンスともミステリーとも言えないリズムで進んでいく。伏線とかどんでん返しとか考えながら観てしまうのは、法廷の傍聴者みたいに初めからサンドラに対して奇異の目を持っているからかもしれない。裁判が進み単純な事実に引き算されていくほどに根深くなる人間の業。落下の解剖ってつまりはそういうことなのかな。