社会のダストダス

モンタナ・ストーリーの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

モンタナ・ストーリー(2021年製作の映画)
4.0
一言でいって地味映画ではあるのだけど、不思議と間が持つヒューマンドラマ。この規模の作品だとなかなか日本の劇場で掛かるのは難しいだろうから、多少遅れてでもNetflixなどのサブスクで観られるのは良いことですね。

脳卒中で昏睡状態の父の危篤により7年ぶりに実家で再会する姉弟姉のエリン役ヘイリー・ルー・リチャードソンと弟カル役のオーウェン・ティーグの静かだけど熱い演技が光る。ヘイリーはティーン役のイメージが強かったから、キラキラ感が皆無なのが新鮮だった。

エリンとカルは異母姉弟でそれぞれの母親は既に他界、残った家族はお互いと、意識のない父、そして老馬ミスターT。トラウマの対象である物言わぬ父を延命し続ける一方で、思い出の象徴であるミスターTには安楽死という区切りをつけようとしている。父と馬は対照で、ある意味天秤にかけられた存在で、それぞれに矛盾した行為をしている。

家族の形と家族の定義。7年間会わなかった姉弟はプライベートな距離感では間が持たず、その日初めて会った看護師エースがいないと父親と“対話”もできない。でも、エリンとカルが話さなければいけない相手は父親ではなく、お互いだったということ。父親に対しては二人とも何となく漠然と介護しなければならないという意識だったのに、ミスターTの対処では意見が割れたのは、父親との関係はすでに完結していたということかな。

家族の再生というよりは、正しいお別れの映画ともとれる。