岩嵜修平

枯れ葉の岩嵜修平のレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
3.8
なんと愛おしい…!誰でも作れそうなシンプルな話に恐るべき奥行きを持たせ、カウリスマキ作でしかない傑作に仕上げる巨匠の辣腕。さりげなく爆笑を掻っ攫いながらホッコリ、時にドキッとさせつつ泣かせる。2020年代の今、戦争の音を聞きつつ、貧困の中でも細やかな愛と友情に心振るわせる。

あの抑揚のない会話は日本語になると濱口竜介作品のようになるのだろうか。フィンランド独自とも言い難いし、やはりカウリスマキならではとしか言い様がないフラットながら血の通った会話の数々。ゆったりしたリズムでも目が離せない。大きな事件は起きない。悲劇は観客の想像に任せる。不思議な感動。

「TOVE」ヤンソン役も印象的だったアルマ・ポウスティは静かながら確かな意思と知恵を感じさせる好演。ホラッパ役のユッシ・バタネンも、酒・タバコ・仕事続かないとどうしようもない奴なのに憎めない。カウリスマキといえばの犬ちゃんも、ファーストショットの目から素晴らしかった。犬演出も上手い。
岩嵜修平

岩嵜修平