Kogarath

枯れ葉のKogarathのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
4.6
ただ相手を信じて待つ。
映画館でアンサが現れるのを待つ。ホラッパから連絡が来るのを待つ。
カウリスマキ監督は、わざわざメモを失くさせたり、事故に遭わせたりして、ひたすら待たせる。
コスパ/タイパを重視する現代人に向けて、もうちょっと時間をかけてみないか、と言わんばかりに。
そしてようやく果たされた感動の再会を、ウインクひとつで済ませる軽やかさ。はあ~最高!
比較される労働者三部作に見られた大きな船など登場せず、地に足をつけて歩いていくラストカットもいい。

ラジオから何度も流れるウクライナ侵攻のニュース。物語の進行と比例して死者が増えていく。
地理的にロシアと地続きのフィンランドにとって、不安にかられるのも想像に難くない。
そんな時代だからこそ、クラシカルな手触りで紡がれる小さな人間愛と、不愛想な人々の言動からにじみ出る優しさが沁みてくる。
対立構造に使われがちな赤と青(例えば男性/女性、共和党/民主党など)の2色がいろんな場面で一緒に使われて美しく調和がとれているのも、一つのメッセージなのかもしれない。

劇場はほぼ満席。「男はみんな同じ鋳型から出来ていて、しかも壊れてる」でみんな笑ってた。
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