凛

愛にイナズマの凛のレビュー・感想・評価

愛にイナズマ(2023年製作の映画)
4.0
家族はそれぞれ色々な形があって、両親がいてもいなくても、外側と内側では違ったものが見える。
「嘘」ではないけど「敢えて言わないこと」もある。
正も負もエネルギーを使うのが家族。

2020年からコロナ禍で、2023年の今は一応気にしなくても良いことになったけど、その間には理不尽なことも失う物もとても多くて、散々な目に遭った。
前向きに進もうと思っても「無かったこと」にはしたくない。

花子(松岡茉優)が新人監督として現場で軽くあしらわれてしまうのも、あるあるなんだろうし、憤りとか諦めの複雑な感情もよく分かる。
家族がいなくてバックグラウンドの分からない不思議な正夫(窪田正孝)の飄々とした雰囲気も悪くない。

映画を見て撮るため不義理していた家族に会いに行ってからは、父親(佐藤浩市)と長男(池松壮亮)と次男(若葉竜也)が加わり、こうなると主役よりも、石井裕也組の常連の独特の空気感に支配されて、別の色合いになってくる。
佐藤浩市の存在感、池松壮亮の演技力には感服する。

失われていく命はあっても、また次の日はやってくる。たくさんの死と向き合うとそれを覚えている人も減ってくる。
人と人が一定期間遮られた結果、寄り添うべき時を逃してはいけないと感じるようになる。
会いたい時に会いたい人はまだそこにいるのか。
凛