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ペナルティループのRenのレビュー・感想・評価

ペナルティループ(2024年製作の映画)
3.0
まだ懲りずにタイムループものを撮るかと疑心暗鬼で鑑賞。台詞が少なくルール説明も無いまま粛々と進む前半と、思いもよらない展開にシフトする中盤は好印象だったけど、後半で急激に興味を失ってしまった。残念。

興味を失ったというか、じゃあどうでもいいかと思った。我々が復讐譚に一喜一憂できるのは、傷付けられる/傷付く生身の体を抱えるズタボロだけどバイタリティに溢れた人間に共感するからで、その「生身」感が少しでも希薄になった瞬間にそれはゲームを繰り返しやっている(のを見ている)のと同じになってしまう。

復讐は自分の中で踏ん切りをつけるためだという感覚が、これで終わりにしよーと途中でマリオを止めるような行為に矮小化されたような残念さ。
復讐とは空虚なのだと言いたいのだとしても、映画として「全部なんでもよかったんだ」という意味での空虚さを感じさせてはダメでしょう。本当に中盤の転調だけのSF小品で終わってしまう。恋人との回想も特に興味無かった。

やりすぎなおしゃれ部屋、謎植物を栽培するどことなく異様なクリーンルーム、劇場のダクトが壊れたのかと勘違いした不快音BGMなどルックが面白いだけにとても惜しい。劇中の植物は時間を表しているのかな(枯れた観葉植物、そびえる大木)。

若葉竜也が大好きなので鑑賞したが、俳優を軸に選ぶとたまにこういう珍作に出会える。もう一度書くけど後半まではとても面白かった。血も痛みも破壊もある世界で生きられるようになってよかったね。

荒木伸二監督、現行邦画界では稀有な感覚のSF作家であることは違いないので、この辺りで人気漫画の実写化などをやってその感性をぐっと大衆に広げてほしいと勝手に思う。似たような小さいSF作品を量産して終わりにはなってほしくない!
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